たふえいんといなあふ 不思議な魔法の言葉 

No Movie, No Life、、、映画と食べものと、ときどき天然妻、、、

埋もれがちな傑作/ビリディアナ


ヘンなオッさん
ケッタイなオッちゃん
いたって真面目な作品

イメージ 1
画像説明左上から、1)睡眠薬を飲ませてどうにかしようとするスケベおやじ 2)最後の晩餐を汚すような乞食たちの蛮行 3)深夜に妻の遺品のハイヒールを履いて恍惚な変態オヤジ 4)亡くなった妻の姪っ子に妻がかつて着たウエディングドレスを着させて喜ぶコスプレ変態オヤジ 6)実はこんなシーンは残念ながら本編には登場しない


貧しく、傷つき、食事も
雨風を避ける屋根もない人たちを集めては
食事を与え、ベッドを提供する
莫大な遺産を手にした元修道女

しかし
彼らは
彼女の「自己満足」に付き合っていただけ

与える側と与えられる側では
目的も考え方も感情も異なる
「無償の愛」は立場が変われば
「自己満足」のように他人の目に映る

与えられながらも
粗野で下品極まりない愚かな連中
そして最後には
恩をアダで返す驚くべき裏切り

ちょっと思い出すのは
国民の反対がありながらも難民を受け入れた国で
難民による強盗やレイプが多発すること
この映画と同じことが
現実の世界でもたくさん起きている

愚かだが
彼等には善悪よりも「欲」が優先される
恩」や「正義」を理解するだろうと考えるのは
こちらの勝手な思い

自作でたびたび宗教を絡めるブニュエルだが
いつも否定的に描くので
この映画もキリスト教の圧力により
イタリアとスペインで上映禁止の憂き目にあった

奇抜なことばかりやっているオッちゃんではないのだ
<忘れられた人々>と並ぶ
立派な立派な映画である

評判を聞きながらも
今まであまり見る機会がなかった
埋もれがちなブニュエル傑作


PS
あるレビューを読んでいたら
『唐突に男が犬を買い取るシーンがあったがどういう意味なのだろう?
意味ないことをやるのがやはりブニュエルなのだろうな』と
そんなトンチンカンなことを書いている人がいた

いくら
ふざけた訳の分からんオッさんでも
この作品は
そんなに難解ではないのだよ

犬を買い取った後に
すれちがう馬車が一瞬通って
その馬車にも犬がつながれているカットがあった

いうことは
同じような境遇の犬は沢山いて
一匹を助けたところで
それは自己満足でしかなく
本当に全てを救うのは
神でない限り出来ない
人間のすることではキリがない
ところが
神はいるのだろうか
いるのなら全てを救うべきだ

主人公の元修道女の考えや行為に否定的だった男が
実は同じようなことをしているということ
言葉でなく
たった1カットで見せ切った
素晴らしい演出なのだ

PS
ところで
全編にわたってクラシックが流れていたが
最後にアップテンポなポップスがかかっている
元修道女が世俗に堕ちたことを示す
見事な音楽の使い方

映画バカなら
ぜったいコレは観なくてはならない