たふえいんといなあふ 不思議な魔法の言葉 

No Movie, No Life、、、映画と食べものと、ときどき天然妻、、、

埋もれがちな傑作/小間使の日記

ブニュエルというと
シュールリアリズムとか
ちょっと難しい感じがして
積極的に観る人が少ない監督かもしれないけど、

いちおう映画ファンを自称していると
<アンダルシアの犬>と<昼顔>くらいは
観ておこうとって人が多いと思うけど、

本当は、ね
<忘れられた人々>とか<ビリディアナ>とか<黄金時代>とか
ブルジョアジーの秘かな愉しみ>とか
他にいい映画がたくさんあるのに
「観ず嫌い」になっているのは残念だね

ある程度映画観ていくと
最終的には
ブニュエルに辿り着くと思うんだけどなぁ、、、

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この<小間使の日記>も素晴らしい出来だ

導入部観ただけで
良さそうと判るね、そう感じるね
ツカミはOK!

ただたんに
車窓から流れる風景を移しているんだけど
雲というか霧が立ち込めていて
ボクには宙から人が降りてきたように感じるね
まるで天使が地上に降りる様にね

そして続くのが
小間使いであるジャンヌモローが
ホームに降り立とうと車内に立っているカットだけど
天使が地上に足を踏み入れる瞬間に感じるね、、、

この映画を印象付ける言葉があるとしたら
「ボーダー」だね
境界だね、垣根だね、壁だね、ここ&そこ、ここと隣り
伝統と無秩序、文明と野蛮、屋敷と森、人と動物(虫)
そして主従の関係、主人と小間使い
違うものを隔てた境界であるが
実はあまり違わないって話であり
境界を越える映画だ
そこを越えた先に何があり何が起こるのか、、、

ジャンヌモローが列車からホームに降り立つ瞬間も
天から下界に超えた瞬間といえる

そして小間使いは
上流中産階級の屋敷という壁に囲まれて日々を過ごす

何もない日々
主人が狩りと女遊びにくれる日々

先代父の変態フェチ爺の
フェティシズムに付き合う日々

そこに事件が起きるね
森の中で起きた少女強姦殺人事件

これをキッカケに
主人公の小間使いは
犯人を捕まることに全てをかけるね
好きでもない男に体を張ってまでも
あの大好きだった無垢な少女の復讐のために
小間使いである天使が全霊で立ち向かう

しかし
事件が解決した先に
ハッピーで、そしてバッドなラストが用意されている
主人公である小間使いが
小間使いの身分から
伯爵である上流中産階級の男の妻の身分となるのだ

その主人公の表情は
まるで映画<卒業>のラストのキャサリンロスのそれのようであり
堕天使のようにも感じた



いずれにしても
ヒーローとして観客の期待を裏切らないような
そんな結末にはならずに幕を下ろす、、、

もっとも印象的なショットは
森の中に横たわる
強姦され殺された少女の死体

血だらけの太もものあたりに
二匹のカタツムリが這う
いかにもブニュエル
シュールリアリズムな1カット

同じシュチュエーションの<処女の泉>での
ベルイマンのアプローチとは明らかに違う

同じ無神論者の両巨匠が描く
天を恨むショット

その後
ベルイマンでは水が湧き
ブニュエルでは天使が一肌脱ぐ

そうやって
無神論者の両巨匠を比べながら観るのも面白いね

神を笑い、観客を笑う、ブニュエル
深すぎであり、軽すぎで、味がありすぎ、、、


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