昔々のこと
子供が生れる前のこと
夫婦でアパートの1階に住んでいた
2階には遊び盛りの子供がいた
外だけでは足りず
部屋の中でも思いきり走り回っていた
とにかく五月蠅い
それでも「元気だなぁ」と思うだけで
2階の人も「子供が五月蠅いでしょ、ごめんなさい」と、顔を合わせるたび云うし
「まじ五月蠅いですよ、ハハハ、でも子供だからね、仕方ないよ、気にしないでいいよ」と、返していた、、、
しばらくすると
うちにも初めての子供が生れたので
少し広いマンションに越した
子供の成長は早く
2才3才になると元気に飛び跳ねるようになる
部屋でもそんな調子だから
子供に言い聞かせ
出来るだけ音を立てないように言うのだが
子供だからまたすぐに音を立てる
すると
床からトントントンと棒でつつくような音が聴こえだした
階下の人が頭にきているようだ
それなので
今まで以上に子供に注意するようになったが
それでも突くトントントンという音は止まず
憎しみが込められているような音を立てる階下の人は
いったいどんな形相で棒を突いているのか
眉が逆八の字に跳ね上がっているだろうか、と想像した、、、
しばらくすると
管理会社から電話が来て
やはり階下から苦情が来ているとのことだ
「飛び跳ねるのはさせないが、子供だから子供特有の小走りみたいのはするよ」と返答した
管理会社の人も「子供ですからね、多少は仕方ないと思っているんですが」と、困った様なふりをする、、、
すると
ある日玄関のチャイムがなった
玄関の外には
夫婦らしい男女が立っていた
名乗らなくてもこの二人が階下の人であろうと想像できた
眉毛が逆八の字なのである
「すごく五月蠅く迷惑しているんですよ」
「そりゃ、どうもすみません、子供がワンパク盛りなものですので、ハハハ」
「やめさせてください」
「もちろん注意はしているんですが、何分ワンパク盛りなもので、ハハハ」
「そんなの知らないですよ!」
オレが嫌いな言葉の一つを
こいつは口にした
知らないというのは、知らない=関係ない=理解しない
一方的な言葉なのだ
自分の言いたいことだけ言って
相手のことには耳を傾けない身勝手なヤツ等が使う言葉だ
「は、そうですか、知りないのですか、それならオレもオマエなんか知らねーよ!バーーーカ」
子供3才
絶好調に手がかかる盛りの頃だが
階下のこの二人には子供がいないから理解できないようである
「ところで、今は何で来たの?言っとくけど、あんたらが来る前は子供は飛び跳ねたりなんかしてないよ、普通に歩いていただけだけど、普通に歩いている相手に五月蠅いというんだね?歩くなということなのかな?生活音だよね、オレの生活の範囲内に制限掛ける訳?そういう権限があるの?あんたら子供いないから判らないようだけど、もしあんたに子供が出来たらどうするの?部屋の中では子供に歩かせないようにできるのかな?っていうか、そうしてくれよな!これだけのkと言うんだから、あんたらに子供が出来たら、あんたらの子供は部屋で歩かせるなよ!それとも、他人に厳しく、自分には甘いのかな?それと、もうひとつ言っておくが、ある実例だ、あんたのような奴らが階下にいて棒で突かれて、その母親はノイローゼになり、子供を部屋の中で歩かせないようにしたら、こんどはその子供がノイローゼになっちまったんだってよ、これでもこうなっても、あんたらは『そんなの知らない』と言えるのか?ま、どうせ言えるんだろな、そういう人なんだろーよ!これからも普通以上の音はたてないように気を付けるが、オレは普通に子供も普通に生活する、普通に生活している上での音に関しては、、、、知らね~よ!」
そして
それから1年ほどしたある日
エントランスで赤ん坊をベビーカーに乗せた
その階下の夫婦と鉢合わせした
生れたらしい
「下の迷惑になる様な音立てないでね」か
「あまり注意し過ぎるとノイローゼになっちゃうよ」の
どちらかを浴びせてやりたがったがやめておいた
子供のことなんかまったく判らないヤツも
育てるうちに理解し学ぶだろう、、、
しかし、話しはこれで終わらない
最後のオチがある
数年後のある日
階下の女がテレビに映っていた
オレは非常に驚いた
そいつが
テレビに映っていること自体に驚いたのではない
テレビで
講釈垂れてるそいつの肩書に驚いたのだ
そいつの肩書は
・
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・
幼児精神科の医師、、、だと
は?