たふえいんといなあふ 不思議な魔法の言葉 

No Movie, No Life、、、映画と食べものと、ときどき天然妻、、、

自動車事故/走行過失、一筆無効---最終回

すると、一本の電話が入った 
「電話いただいたようで?」
そう、ぶっきら棒に電話の向こうから声がした
 
「うちからそちらに電話をしたのですね?」
「はい、履歴に残っていたので電話したのです」
「お名前は?」
「権左衛門です」

かわった名前なので覚えていた

「ぁ、、、たしか、タクシ-の運転手さん」
「はっ、はぁい、、、」
  
タクシーの運転手は
電話に出なかったわけではなかったのだ
それにしても
電話をかけまくっていた日からいったい何日経っただろう?
 
「お話ししたくて何回もかけてしまいました、あなたが事故を起こされた相手の会社です」
「ぁ、、、」
 
「もちろん業務中のことですから会社と交渉するのが当然ですが、会社は大の大人の書いた念書を無効と言っているのです」
「ぁは、、」
「その意味が分かっていて書いたことですよね?子供が書いたわけでも、押さえ付けて書かせたわけでもないんですよね?それを、、、」
「ま、そうですね」
 
「その話しの前に訊きたいことがあります。ボクもあの現場に行ってしばらく眺めてみたんですよ、タクシーが裏道に使う道ですね」
「はい」
「みんなスーッとTの字に入ってきますね、見通しが良いからですよね」
「そうですね」
「それなのに、すごく見通しが良いのに何故うちの車に気が付かなかったのか?それが不思議なのです」
「それはですね、会社でドライブレコーダーでも確認しましたが、、、、」

タクシー会社の事故係は
ドライブレコーダーに関しては今まで何も言ってない
有利なことでも映っていれば必ず話に出るはずだが
不利な状況になるのでドライブレコダーについては口をつぐんでいるのだな、、、
 
運転手が言うには
うちの車が通過する前に様々な他の車の動きがあり
それに翻弄されなかなか右折できずにいたそうだ
やっと行けると思い
ハッキリと左を確認することなく発進した瞬間のことだったそうだ
 
ほんとうに私の不注意なんです、なんでかなぁ、気が焦っていたのかな、自分でもまったく分からない」
 
「でも、会社はうちにも過失があるという」
「ま、それは、いうでしょうね」
「でも、こちらに過失ありましたか?部下はふつうに走っていただけなのに災いが降りかかってきたと言って、過失に対しては納得いかない思いなのですよ」
「そうですか、、」
「だから、納得できないなら裁判するか?言ってるんですよ、彼に、、、」
「裁判なんて、、、」
「でも、あなたの会社も、うちの彼も、私も、納得できないんですよ、そうするしかないじゃないですか」
「裁判だなんて、、、、」
 
そして、運転手は会社との交渉で生じた差額分を支払うことを約束した
 
「ま、改めて念書に判くれとも言わないし、電話で、しかも口約束だけど、男と男の約束ということでいいですね?それでも万一支払いなくても、ダメな奴を信じた自分がバカだったと思うことにしますよ」と言うと、
 
「心配しないでください、そんな人間じゃありませんから」と運転手は強い口調で言い切った

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実は金のことはどうでも良かった
この件で日が経つにつれ金のことより、
「過失」とか「無効」とかへったくれとか、あとからゴチャゴチャ言いだす
そういう日本にありがちなズルイことに腹を立てたのが一番の理由だ

相手から事故時の状況と気持ちが聴けただけで一気にスッキリした
差額支払の件は払おうが払うまいが本当にどうでも良い気分になった
ズルい人間かどうかは、その運転手さん次第で
尊敬するか軽蔑するかもその運転手次第なのだ
 
保険屋とか事故係とか裁判所とか前例とか判例とか本当にバカらしい
本来は当の本人たちの思いが総てなのだ
 
それにしても
「念書」はとるに越したことはないけど
「絶対」ではない事だけは知っておくべきだ

-おわり-