たふえいんといなあふ 不思議な魔法の言葉 

No Movie, No Life、、、映画と食べものと、ときどき天然妻、、、

蘇生させたことがある、、、

うちの会社の前面道路では
頻繁に事故が起きる

バイクや自転車との接触事故も
日常茶飯事なので
慣れっこになっているが

その雨の日の事故は
いつもと違っていたのを
すぐに感じることが出来た

ドン!

また事故だな
慣れっこになっているので
すぐに窓際から外を見ることがない

しかし次の瞬間
悲鳴にも似た叫び声が聴こえた

「だれかー!たいへんだー!」

ぁ、いつも事故とは違う感じだ、、、

タクシーとバイクの事故のようだった
タクシーのドライバーは外に出ることなく
車にこもってオロオロしながら
電話をかけようとしている

すぐ横でバイクのライダーが倒れているが
ライダーの身体に動きがない

自分は外に飛び出し
すぐにバイクのライダーの様子を伺った
まったく動いていない

なんかの機会に少し教わった
ファーストエイドを思い出しながら
気道を確保してみたり
心臓マッサージをしてみたり
人工呼吸をしてみたが
なかなか反応が得られない
死んでいる気がした

男の手を握り
ギュッと握られたままの手に指を差し込んでみたが
こじ開けられない感じで
まったく反応がなく
非常に冷たくセメントのように固まっている

雨が降っているうえ非常に寒い
車で通り掛かった女性が察してくれて
自分の車から毛布を持ってきて
倒れているライダーに掛けてくれた

まだAEDなど普及していない頃のこと
また人工呼吸や心臓マッサージを再開してみた
しかし身体に変化はない
完全に死んでいるようだ

泣きたい気持ちになってきて
ファーストエイドの段どりなんかどうでもよくなってきた

身体を横にして身体をさすった
大声で「おい!おい!おい!起きろよ!」と叫び続けた
そして背中を叩きだした
「起きろよ!起きろよ!」
叩いている手がだんだん強くなってきた

「おーい!起きろ!起きやがれ!」
もうボコボコ背中を叩いている

どこからか
「たっふぃーちゃん、そんなに強く叩くと折れちゃうよ」と、

はぁ?
見上げると気づかないうちに
かなりの人たちが周りを囲んでいる
その中に町会の人がいた

「骨が折れるだぁ?もう死んでるんだよ、
 骨の一本二本、生きるかどうかってときにどうでいいってよ」

助言を無視してボクは死体をボコンボコン叩き続けた
「バカ野郎、てめえー、起きやがれ、この野郎!」

すると不思議なことに
ボクの人差し指を差し込んでいた
堅く握られたライダーの手が
ホワンと緩くなり血が通ったのを感じた
「うぉおおお、生き返った」

人間の身体は昭和の家電のようだ
デジタルではない、アナログだ
叩いていると生きる代えることがある
不謹慎だがフトそんなことが頭をよぎった

ライダーの目は閉じたままで
声も発することは出来ないが、、、たしかに生き返った

その後すぐに、救急車が到着して、運ばれて行った

よかった、、、

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しかし

この話には続きがある

それから半年


すっかりそのことも忘れていた頃
警察の人が訪ねてきた

半年前の礼を言いつつ
今まだ病院にいることを告げられたが

何か奥歯に物が挟まった様な
何か言いにくいことを言い出せないでいるような
そんなそぶりを見せる

「じゃ、そのうち、退院になるんでしょうね、近々ですか?」
ボクの言葉が呼び水になったようで

警察の人は話を切り出し
恐るべきことを言い出し
ボクは耳を疑った

「助けてもらって、なんなんですが、命は戻りましたが、
 実はあれからずっと、植物人間なんですよ

ぇっ、、、


植物人間でいることの本人の人権
家族の苦労を考えると、

ボクのしたことは
もしかしたら必ずしも
良いことではなかったのではなかろうか、、、

その後しばらく
罪悪感に似た気持ちが支配した

それにしても
何故に警察は半年もたって
そのことを伝えに来たのだろう、、、

今でも時々このことを思い出し
あれは正しい事だったのか
自問自答することがある