昨年評判だった石井裕也監督作品、、、
作中序盤、制作スタッフが主人公の新人監督をいじいじといびる、(言ってることや発想がいかにも経験の薄く)「若いねえ」(登場人物の造形や台詞に)「理由がない」「意味不明」「リアルでない」「どんなことにも理由があるだろう!」と、、、でも、ボクに言わせればそれこそ経験が少ないと思う、ボクの人生や日常ではちょくちょく「そんなことあるかーい!」「なんでそうなるの?」ってな、まるでご都合主義の映画の台本のようなあり得ないことばかり起こる、「そんなことありえへん」言われても、映画にしたら呆れられるような馬鹿げたことばかり実際起こっている、むしろボクとってはそんな馬鹿げたことが起きることがウソでなく真実でリアルなのだ、、、しかも、それらはイヤなことばかり、困ったことばかり、それは他人にとって映画にしたら面白いかもしれない、、、だからボクは主人公に同情できるのだ、理由や意味なんてことの方が意味がないことであるかもしれないことに気づいている人とそうでない人、、、
コロナでは従来売上げの少なかった飲食店は大儲けしたわけで、ボクの知っているだけでも、スナックのママは何度も温泉旅行に行き、4坪くらいで立ち飲み屋をやっている店主はその金で自宅のリフォームをした、そんなわけで飲食店は潰れるどころか、売上の何倍もの金を手にして、コロナバブル!コロナ万歳!だった店もあるわけだ、、、この映画の中でも手にした金で無意味なシャンデリアを買った、意味なんかない、金があまったから、、、いったいあの税金の使い方は何だったのだ!本当に苦しいところに金が廻っていない、弊社はコロナのために何千万円もの借金を抱えることになったというのに、なにがシャンデリアだ!温泉旅行だ!リフォームだ!日本政府や官僚のやることは本当に不公平なことばかりだ!
で、映画の方だが、、、石井監督はたびたび家族を描く、たいがい何かをきっかけにした家族の崩壊と再生、、、でも、どこか馴染めないというか、実感を得られないというか、でも、一観客がそう感じたとしても、主人公にとってそれがリアルなら、そうなんだねと思うしかない、、、
ストーリー
ある映画製作会社で「消えた女」というプロジェクトが進行していた。監督は若手の折村花子。20年以上前に失踪した彼女の母親をテーマにした彼女自身の家族の物語。助監督の荒川は経験は長いが花子の考え、やり方が理解できない。「理由はなんだ、意味不明」と頭から否定し、業界の常識・しきたりを押しつけ、さらにセクハラしてくることに花子は悩んでいた。
バーで花子は舘正夫と出会う。空気が読めないが、正直で正義感が強い。花子が兄役としてスカウトした落合という俳優は、実は正夫の親友・ルームメイトであること、正夫もかつて俳優志望であったことがわかる。おたがい似たところがあると感じたふたりは思わずキスをし、記憶をなくすまで飲んだ。
花子と荒川の対立を問題視したプロデューサーの原は監督を荒川にかえた。花子の降板によって落合は仕事を失い、自分には才能がないと思い込んで首を吊ってしまった。葬式帰りの夜、正夫は花子に、夢のために使ってくださいと全財産の70万円を差し出す。花子は金に困っていたが、自分の夢はどうなったんだ!受け取れない!と断った。
「消えた女」をあきらめきれない花子は正夫とともに久しぶりに実家に帰った。父の治にカメラを向け、お母さんはなぜいなくなったの?と問い詰めるがうまくいかない。実は治は胃癌で余命1年と宣告されていた。大事な話があると呼び出された長男(誠一、ホテルの社長秘書)、次男(雄二、カトリックの神父)が帰ってきて久しぶりに家族四人がそろった。
父と誠一は真実を知っているらしい。幼かった雄二と花子はお母さんはガンになって外国に行った、としか聞いていない。父がついに、お母さんに電話してみようか、と言い出す。スマホのキーパッドを叩くと、美樹、という表示が出て着信音がきこえ、男性が出る。美樹は3年前に死にました。遺骨はフェリーから海に散骨しましたという。
母はガンになったとき交際している男性がおり、彼の元へ去ったらしい。次の日、父の先輩の則夫が経営する海鮮料理屋へみんなで行った。則夫の娘を自殺に追いやった男に父が制裁を加え傷害罪でつかまったこと、自暴自棄になって飲んで暴れる父に母が愛想をつかして家を出たこと、多額の損害賠償金を払ったことなどをはじめて知る。父を誇りに思う気持ち、家族を思いやる気持ちが生まれた。
1年後、誠一は社長にはじめて反抗する。映画監督である花子のことを侮辱したから。雄二は教会で、子どもたちを素直にもっとハグしたかったなーと語る父の幻覚を見る。誠一、雄二、花子は父の遺骨を海にまくためにフェリーに乗る。映画はまだ完成しないのか、とたずねる誠一に花子が、タイトル変えようかな「消えた女」じゃなくて「消えない男」に。消そうとしても消えないでしょあの人は、と答え、三人は号泣する。
3点 赤、赤、赤、赤、赤、ハグ、ハグ、若いねえ、、、