よく是枝裕和を評して
「家族愛」を描く名匠なんて言い方をする人がいるけど、
はたして、そうだろうか?
ボクはそう思ったことが一度もない
<万引き家族>にしても<海街Diary>にしても<そして父になる>にしても
ほかのほとんどの映画でもそうだが
血の通った「家族」とは異質な「個」の集合体を描いている
<歩いても歩いても>や<海よりもまだ深く>などのように
血のつながりがあってさえ「個」を感じる
だから「家族愛」というよりは「人間愛」なんだよね
「血」ではなく「心」だね
それを、少し離れた位置から覗いているような感覚が「是枝映画」
さて
是枝監督の新作<真実>を観た
まったく真実が書かれていない<真実>というタイトルの自伝を出版したフランスの名女優と、その周囲の人々とのお話し、、、
この映画では、
「個」というよりも、家族を「血」で描いている
「人間愛」というよりも、「家族愛」
<万引き家族>で集大成となった「個」の集合体とは違う
新しい是枝映画のスタートに思えた
そして
よくありがちなオーソドックスな物語で
最後はキレイにまとめてくれてしまってはいるが、
ここ数年の日本映画、外国映画を問わず
一番素晴らしい脚本だと思う!
調べる前までは
フランスの人による脚本を与えられて是枝監督が監督を引き受けたのかと思っていたが
是枝監督自身のオリジナル脚本だと今知った
とにかく素晴らしい脚本だ
それなのにまったくヒットしていないとは、、、勿体ない
カトリーヌドヌーブに「ポリコレ」を語らせるとは(例のドヌーブ発言)
是枝監督も随分とウィットに富んだというか
フランスだからエスプリの効いたというべきか
是枝監督ってこんなに面白い人だったんだぁ
ほかにもほかにも笑いどころも満載だ
ボクの次男いわく
「バーグマンに対して、ドヌーブによる<秋のソナタ>だ」そうだ
タバコの印象も共通点だという
前半
なにか落ち着かない
あまり是枝っぽい感じの画ではないような気がしたし
いつもより随分とカットを割っているような気もするし
キャメラの動きも普段はもっとゆっくりだと思うが
夜にこっそり亡き妹のワンピースを取り出すドヌーブとか
執事を失った後のイーサンと子供の台所のシーンあたりの
中盤から終盤にかけては是枝そのもの
いつのまにか引き込まれていく
いつものように音楽の入り方が抜群にいいし
ぜったい長回しでありたい場面では、じっくり演者を捉えてワンカットで攻める
アンリーが英国で<いつか晴れた日に>をいかにも英国な空気で撮ったように
同じアジア人の是枝裕和も純粋なフランス映画を撮った
ぜったい観るべき!
「DVDでいいや」と思っている人も、今すぐ劇場に走れ!
そんな素晴らしい作品でした
ヒットしてなくてもボクは大好き、、、
4☺