チャップリン映画のラストシーンを彷彿させるあのラストで
「ところで犬の名前はナニ?」と男が訊ねると
女はすかさず「チャップリン」と答える
観客がチャップリンの映画のようだと思っている
絶妙なタイミングでのセリフ
やられたーーー
そしてアキの映画愛
はじめてのデートで観に行く映画は
鑑賞後ウディアレンのように映画の感想(主人公の二人ではない)
「ゴダールの<はなればなれに>だよ」と、
そう話している後方に貼られているポスターにはアランドロン
おそらく<若者のすべて>
本編で最初の挿入歌は
ロシアがウクライナに侵攻したニュースを告げるラジオから流れる竹田の子守歌
アキちゃんのいつもの日本贔屓が本作でも感じる
それからはお約束とおり
犬、カラオケ(演奏シーン)、映画といつものとおりのシーン
ときどき小津映画を観ている感覚に陥る
小津の新作を観ることは叶わないが
アキちゃんがその代りを果たしてくれている感覚
実際、主人公がベッドで横になるカットから続く
枯れ葉の風景ショットが幾つか連なるシーンでは背景の音楽も含めて
小津の映画そのままのように撮っている
アキちゃんの映画は「貧しさ」と「生きる」ことがいつも中心にあるのだが
今井正のように声高く誰かのせいに訴え憎むのではなく
そんなことで立ち止まらず兎に角働き
貧しさの中から小さな幸福を見つけようとする
そんな人間が愛しく思えてくる
それがアキちゃんムービー
何かの賞を獲るとか
興行収入がどうとか関係なく
セリフも少なく派手なストーリー展開はない
だけど、そんなアキちゃん映画を多くの人が愛してやまない、、、
P.S.
引退宣言したアキが、何故再び撮ったか?
伝えるべき何かを忘れていたからかも知れない
アキが伝えたかった大切なこと
それは映画愛、、、