たふえいんといなあふ 不思議な魔法の言葉 

No Movie, No Life、、、映画と食べものと、ときどき天然妻、、、

埋もれがちな傑作/故郷

瀬戸内海はきれいだね
1か月ほど暮らしたことがあるけど(というか、仕事で)
非常に穏やかな海に浮かぶ小さな島々
人々が海と共に暮らしている

マリンレジャーが根付いていて
小さなボートで小さな無人島に上がり
ノンビリ休日を過ごす人たちを見ると
羨ましくなるほどだ

一方
厳しい現実もあるのだね(あったのだね)

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この
倍賞千恵子主演の民子三部作の2作目<故郷>も
そんな美しい瀬戸内海の小島を舞台に
時代に取り残されていく一家を描く

本編の導入部が秀逸だ
しばらくまったくセリフ無しで見せていく

こんな感じに、、、

石を沢山積んだ小さなボロ船がトロトロと海を行く
すると背後から来た最新の大型船が一気にボロ船を追い抜いて行く
それでも小さなボロ船の女は表情を変えず
やかんから湯呑に茶を注ぎ舵をとる夫に渡す
湯呑を受け取った夫は舵を手から離すと
女が代わって舵を握る
小さな子供がそばで寝そべっている
妻は母は、その女の瞳は遠くを見据えている

何も言葉がなくても
この家族の生活ぶりが分かる
まったく映画的なアプローチだ

「こんないい場所ないよ、なのに何で離れていくかねえ」
時代遅れとなった石運び船を下り
新しい場所で新しい生活を迎える決心をするまでの家族の話

なにかと家族を気に掛ける渥美清が好演している
もちろん主役の二人も、父親の笠智衆も、役者がいい
そして役者に交じって実際の島の人たちも演じる

広島の街に出てきてレストランでステーキをほおばる夫
「うまいのぉ」
このセリフにホロっとして鼻がツンとした

お金、働くこと、食べること

好きことと生活をはかりにかけなきゃならない
それが船長であり夫であり父である男である

ボロ船の引退
やがては小島の浜で燃やされる

ツボに入って
しんみりして
いい映画観たなぁ