今年は
あまり新作を観ていなく
それでも新作30数本の中のその中でも
<ファントムスレッド>が一番優れていると思っていたが
この映画<長江 愛の詩>も甲乙つけがたい素晴らしい出来だ、、、
全カット真剣に吸い込まれるように観た
画の隅々まで目を凝らして全て見逃さないように凝視した
もちろん中国のこの長江のロケーションがあっての
この美しさなのだろうが
21世紀に入って最も優れた映画の一つと言える
ウォンカーウァイの美しい名作<花様年華>を
クリストファードイルと共に描き上げた
ホウシャオシェン組のリービンピンのキャメラが素晴らしすぎるのだ
「水墨画のような」というチャチな形容しかできない自分が腹立たしいが
黒からグレーに至るグラデーションの
紫が混じったような炭のような色遣いが美しい
流れゆく山肌のそれぞれさえ
すべて違う黒からグレーの色で映し出されている
ボロ船の船体の色さえ
黒を使い分けて塗っているようだ
細かい仕事ぶりが見てとれる
物語は
亡き父の遺したボロ船で怪しげな荷を長江を遡って届ける道中の話し、父の描いた長江図をなぞるように父の詩と共に辿る旅、道中停泊するたびに同一人物の女性と再会を続ける不思議な旅、しかし、三峡ダム(ジャジャンクーの名作<長江哀歌>の舞台)を越えてから女性は現れなくなる、、、そして、死の先に辿り着く長江の源流地、、、
まるで<雨月物語>のように感じた
<雨月物語>の幽霊は
この映画では父の人生に関わった女性たち
港々の女のように
停泊した地で残した父の亡霊たちのように感じる
そして
リービンピンは宮川一夫を追っている、、、
万里の長城以来の中国の巨大プロジェクトと云われた
三峡ダムにおいて一瞬<長江哀歌>と重なったようにも感じるし
苦しく、そして暗さは共通するが
(作風)タッチが違う、(画調)トーンが違う、アプローチが違う
中国の現実を追う<長江哀歌>と
中国の現実から逆行する<長江愛の詩>
こいつは凄い一本だ!
4.5☺