たふえいんといなあふ 不思議な魔法の言葉 

No Movie, No Life、、、映画と食べものと、ときどき天然妻、、、

「何者」、、、PM奮闘篇その2

黒沢清の「覚えてるよ」は
最初おべんちゃらに思ったが
「セリフが面白かった」と言われた時に
手紙と同じ言葉だったので
まんざらウソではないと感じた、、、
 
そんなことなどもあると
キツイ仕事も楽しく思える

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CMは制作費も多く金銭面での苦しさはないが
会社では低予算のビデオや記録映画も製作していたので
それはCMとは金銭的にも肉体的にも比にならないキツイものがあった
しかしキツイ撮影ほど印象に深く残っている
 
そして
ときどきイヤな思いもする
 
企業向けビデオの台本を書いて上司にみせる
「勝手に書いてみたんですが、どうでしょう」と、

上司は額に皺を寄せページをめくって行く
「すごくイイんだけど、若いからね、いやキミが若いから、説得力がないんだよ」
 
イイのに、説得力がない?若いから、、、
 
日本って結局こんな国ですよ
 
同じ高級なワインを手土産に訪ねても
髙そうなスーツを着たロマンスグレーの紳士の場合と
GパンTシャツの若造が持って行ったのでは
同じワインでも
もらった相手はまったく違う印象を持つだろう
 
それと同じように
若造の書いた台本と
年のいった作家っぽいおじさんが持って行った台本では
受け取った相手の印象は違うものになる
作家風だと立派で、若造は小僧なのだよ 
本質を見極められない連中が多い、、、
 
ほかにも
こんなこともあった

ボクが企画したCMがACCで賞をとったりすると
(ACCのCMフェスティバルは日本の広告業界でもっとも権威のある賞)
 
当初はその企画にあまり乗り気でなく
ケチさえ付けていた代理店のクリエイティブが
賞を取るなり態度が変わって
自分が企画したように手配し手柄をとる

ボクは手柄は入らないが
さもしい惨めな姿を見せられるとガッカリする
それが大人の世界ってやつだ
 
こういうのは日本のサラリーマン社会では
どこにでもあることかも知れないけど
クリエイティブな仕事やアーティスティックな世界ではやってはいけないよ
 
周りに優秀なスタッフがついていて
そのお陰で名声が保たれている大金持ちの
スーパークリエイーター&プロデュサーみたいな人がいるけど
毎日1曲作詞できる訳ないんだよ
そうやって虚像を作り上げて独りだけ手柄をとり続けるんだよ
(はい、これは余談)
 
とにかく嫌らしいね大人の世界は
あさましく、ダサい人間、汚い世の中
無能な奴ほど自分を有能に見せようと
自分を装飾するんだよね
 
って
その頃の自分はガッカリしながらも、
徐々にディレクターの仕事の一部もさせて貰えるようになっていた
 
そしてその日は
ディレクターの好意で初めてMA
(アフレコ、音楽や効果音など音の編集)のディレクションを任された
 
すると
まさしくその作業の途中
MA室に電話が入った、ボク宛ての電話だ
(この頃はまだ携帯はありません)
 
しかも父からだそうだ
『珍しいなあ、会社に電話って初めてだな』と考えながら受話器を手にすると
 
おい、オレだ、オレはもうじき死ぬ、会社継げ
 
凍った、、、
 
父の言葉もそうだが
 
父との約束
父が死ぬのが早いか、ボクがディレクターになるのが先か、、、
 
今日まさしく今日、今、
「ディレクターになったよ」とは言えなかった、、、