日本映画史に残る名作であるが
まだまだ一般的にはそう言われることもない
埋もれがちな傑作
時が経つにしたがって
評価が上がってゆく気がする
名女優・田中絹代の監督作品<乳房よ永遠なれ>
このタイトルから薄々気づくように
女性の乳癌の話、、、
前半は主人公の夫の女性問題と
抱える家族の問題で進行していくが
後半は闘病生活にフォーカスして物語は語られる
この構成がいい
後半では前半のことをストーリーとして引きずらない
テンポと集中力を持続させる、、、
闘病生活の中で芽生える恋心
歌人・下城ふみ子の畳みかける不幸
(夫の女性問題、離婚、密かに憧れていた友人の夫の死、子供のこと、そして乳癌
、そして肺がんへと転移)と
愛した二人の男のこと
辛抱強かった主人公が
後半では我儘になっていく
生きること、(歌を)書くこと、恋することに我を出す
残り少ない命なのだから
以前のように自分を抑えることなく生きると決めたような女
だから愛した男にもグイグイと行く
今なら差し詰め「肉食系」女子、、、
「乳房喪失」の新聞記事では
対位法の音楽チョイス
「死んでいく」シークエンスでは
音楽もセリフも極力削いで画の連続で見せてゆく
ひさしぶりに大号泣、、、
田中絹代が初監督とは思えぬほど
手慣れている
と、思ったら
撮影の最中
小津がしきりに応援(口出し)にやってきたそうだ
成瀬も来て口を挟んでゆく
だから、小津っぽかったり、成瀬っぽかったり、溝口をも思わせる画があったり
大監督と大女優の総力で作り上げた立派な作品なのだ、、、