成瀬というと「メロドラマ」
つぎに「子供」を題材にした映画が特に初期の頃に多い
日中戦争開戦と太平洋戦争開戦のちょうど中間の頃に作られた本作は
成瀬の得意とする「メロドラマ」と「子供」を盛り込んだ一品
製作に制限が多かったその頃に
よくも「メロドラマ」が作られたものだと感心するが
それは、さすが成瀬の語りの巧さによるところが大きい
本篇の冒頭に「大日本愛国婦人会」のエピソードで始まり
ラストは涙泣き父親の「出征」で幕を閉じる
ファーストとラストだけ観れば完全なるプロパガンダ映画なのだが、
実際、肝心の中身では
ほぼ戦争には触れずに物語は進行する
数々のエピソードを連ね自由自在に子供ドラマとメロドラマを形成する
やはり語りの巧い成瀬だからこその仕事、、、
簡単にあらすじを言えば2行
親友のトミコとノブコの父親と母親は、以前愛し合っていながら結ばれなかった間柄だったとトミコとノブコのふたりは知ることになる、、、
エピソードは次の通り
前年まで成績トップだったノブコの成績が落ち込み、代わってトミコが1位になったことから物語が始まる
ノブコの父親はノビノビ育てる主義、一方教育熱心な母親は担任の先生を訊ね、成績が間違いではないのかと詰め寄る、さらに代わって1位になったのが誰なのかと訊ね、それがトミコだと知ると別の怒りが沸き上がる
ノブコの成績のことでケンカになる母親と父親の話を盗み聞きしたノブコは、父親が結婚以前にトミコの母親と交際していて、結婚を目前にしていたことを知る
その秘密を翌日トミコに話すノブコ
この校庭のシーンがいい
引いた画、引き気味のカットをつないでおきながらの
いきなりのこの寄った画が入ってくるから
ドキっとするんだよね
この後
トミコが母親や祖母にその件を訊ねるくだりでは
母親は正直に話すからよく聞きなさいといって話したことと
祖母が同じように話したことが違っているので
トミコは当惑する
ここらの大人の「秘密」の「正直」な話が
子供の信頼を裏切ることになる、、、
そして、クライマックスと言ってもいいのが
ひょんなことからトミコの母とノブコの父が再会するシーン
そこにはふたりの娘もいて二人を観察する
この河原のシーンもいい
父親に負ぶってもらって帰るノブコを見て
トミコも母親に負ぶってくれとせがむ
結婚できなかった二人だが
今はそれぞれ別の背負うものがあることを表現している
そして
ノブコの父からトミコへのアプローチ
それを知ったノブコの母の嫉妬
ノブコの父が母の誤解を解く一方で
威厳をもって叱責するシーン
父に届いた赤紙
ノブコの母とトミコの母の和解
といっても、対面してのハッキリした描写はないが
ハッキリと観客に伝わる
それが、また巧い
ラストは
両家族が笑ってノブコの父を見送る、、、泪はない
傑作は言い過ぎにしても
成瀬ファンなら観ておきたい一作
大したストーリーでもないのに
いつもの成瀬の術中にはまり
ついつい引き込まれてしまう、、、