成瀬の作品を
今更「埋もれた」というのもなんだが、
こういう代表作といわれることもない作品でさえ傑作、秀作が多いのが成瀬
成瀬に関して
「語りが巧い」とボクは言っているが
それでは語りってナニ?
ひとつのエピソードをしつこく追わない
省略するところは思い切りジャンプしてしまう
(イーストウッドなんかもここらへんが巧い)
たとえば、この映画では
*夫が死にそうな状況
*次にお店の戸に貼られた「忌中」の札
*そして、墓参り
死ぬ場面も、妻の涙も、葬式の慌ただしさも
そんなカットは一切挟まない
挟まなくても物語からはぐれてしまう観客はいない
テンポという言い方に置き換えることも可能だ
別のエピソードでは
長男が大病し床から母を呼ぶ
*長男が母の手を握る
*「一緒に寝て欲しい」とせがむ
*墓参り
こういう語りだよね、カットの並べ方
ヘタな監督なら撮ってあるだろうカットを
次つぎと棄ててしまうような
消去法的にいらいなものは全て棄て
必要なものだけを残してつなぐ
それによりセリフさえ必要としない
シンプルだけど、ほとんどの監督たちが出来ないこと
これぞ、モーションピクチャー!
物語は
焼け跡の東京、やっとバラックが立ち並びだし、すこしづつ皆が動き出し前へ進もうとしている町、なくなった商店も再開しだすが、いっこうに道は舗装されず、誰もが貧しく、皆が腹をすかしている、、、そんなあの頃の(と、いってもボクは知らない)ある一家の物語、父(夫)が戦前にやっていたクリーニング店を再開させる、ところが開店まもなく亡くなってしまう、長男も肺を患い若くして死ぬ、次女は口減らしで養子へ、自分の子は養子に出すのに、親戚の子供を預かっている、いつまでたっても貧しさから抜けられない、それでもお母さんは愚痴ひとつこぼさない、、、
水木洋子の脚本
助監督は石井輝男