たふえいんといなあふ 不思議な魔法の言葉 

No Movie, No Life、、、映画と食べものと、ときどき天然妻、、、

埋もれがちな傑作/鶴八鶴次郎

 

成瀬となると

なんかしらのメディア(amazon)か

DVDなどのソフトで観られるものが

どうしても語られることも多くなるし

それは仕方ないことだが

 

しかし

なかなか観ることが出来ない戦前の成瀬にも

後年に劣らない素晴らしい作品が幾つもある

せっかくの傑作であっても埋もれたままでは

日本は文化後進国と言わざるを得ない

 

もうね、

溝口、小津、成瀬クラスは全てDVD化しようよ!

文化の遅れた国として諸外国から笑われると思うよ、、、

 

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第一回直木賞川口松太郎の作品を原作に

芸人の世界とそこで生きる男女とその贔屓筋を成瀬が描く<鶴八鶴次郎>

 

主演は長谷川一夫山田五十鈴

 

女の母親を師匠に子供の頃から兄妹のように一緒に芸事に打ち込んできた二人

とくに新内節は男、三味線は女

この二人「鶴八鶴次郎」のコンビは若いながらも確かな実力と絶大な人気を博していた

 

非常に仲の良い二人ではあるが

こと、芸に関してはお互い一歩も引かずちょくちょく大ゲンカとなる

(このケンカのシーンが面白い)「もう二度とお前とはやらない!」と、

ところが翌日には再び一緒に高座に上がる、、、W

 

そして、周囲は二人は一緒になるべきだと思っているが

そこに贔屓筋の若旦から女に結婚の申し入れが、

 

将来のことを考えると家に収まるのも良いかと考え

それを男に伝える女だが

それを聞いた男は「それなら自分と一緒になってくれ」と告白する

 

男はずっと女を好きでいたが言えなかった

女はずっとその言葉を待っていたと、

実は長いこと相思相愛

結ばれることが必然

 

そして

二人で寄席を買い取り、それを機会に結婚しようと誓い合うが

ところが、男の愚かな「嫉妬」「意地っ張り」により二人は破談となる

 

女は結局若旦と結婚し

男は場末まわりと、酒に溺れ身を滅ぼしていく、、、

 

落ちぶれた男を見かね

以前の仲間たちにより

「鶴八鶴次郎」のコンビを復活させようとする

 

女の亭主は快諾する

兎に角この男がいい男

金もあるが、誰に対しても優しい

 

それに比べて男は

果たして女と結婚していれば、女を幸福に出来たのか?(いや、できない!)

 

男女の感情を抜きに

芸人として

ふたりの公演は大成功を収め

次なる大舞台が用意される運びとなる

 

それによって女に潜む生来の芸人魂に火が付き

「芸に生きていきたい」と

「亭主と離縁してでも芸に打ち込みたい」と、口にするようになる

 

それを聞いた男は一芝居を打ち

女の芸をこき下ろし、大喧嘩となりコンビを解散する

 

ラスト

番頭と酒を交わしながら男は言う

「あいつの芸は最高だ、二度とあんな芸人は世に出て来ない」と、

 

でも、これで良いのだ

素晴らしい芸は失ったが

彼女の幸福が守られたのだから、、、

 

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昔の女優は結婚しなかったり

結婚しても子供をつくらないとか

できても自分の手で育てない、育てられないという状況があったよね

それほど、この世界で生きることの厳しさ

片手間で出来ることではないということ

 

この作品は大正時代が舞台だが

この世界では今でも

そういった女性(真の女優)の立場があまり変わってないかもしれない、、、

 

今回鑑賞したのが映画館でなければ

号泣ではないにしても

じわじわと涙したであろうと思う

 

愚かな男、愚かな女

でも、互いに対する心の奥になくなりはしない愛情に涙するのだ、、、

 

成瀬を代表する一本

機会があったら是非に観るべき!

 

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