たふえいんといなあふ 不思議な魔法の言葉 

No Movie, No Life、、、映画と食べものと、ときどき天然妻、、、

埋もれがちな傑作/PASSION

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例えるなら、

JAWS>を撮る前のスピルバーグが、もっと若い頃に<激突!>を撮っていたという事実のような衝撃のようなもの、、、その後、世に名を遺すような監督は必ず最初のうちに凄い作品を残しているものだ、、、

 

まさに埋もれがちな傑作、、、次男が以前から言っていた「これ観ずに濱口語るな!」と、、、だから、観た、、、<ドライブマイカー/以下、DMC>で世間的に知られるまで濱口という監督の名前を知らなかった人も大勢いると思うが、映画小僧たちの間では長らく憧れの存在だった、、、それが<ハッピーアワー>で日の目を見て、<寝ても覚めても>で更に注目を集め(別の意味でも注目を浴びたのが残念だったが)、、、とうとう<DMC>では本家アカデミー賞の作品賞にノミネートされるという快挙まで成し遂げた、、、そんな映画小僧たちは濱口のような映画を作りたいと挑むがことごとく同じようには作れないことを知る、真似するだけでも叶わない存在、、、もはや神の領域、、、

 

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本編の3/1が経過したところで、物語が反転する、、、恋だ愛だの大人の世界でない、子供たちの世界へ、、、主人公の女性は高校の教諭、クラスの生徒が自殺をした、彼女は生徒たちに「暴力」について語りかける、、、ジャストタイミング、ロシアのウクライナ侵攻のことを重ねながら聞いてしまった、、、暴力はなぜ起こる?思い通りにならなかったことへの腹立たしさをぶつけるもの、内からくる暴力、外から来る暴力、、、外から突然来るものに対して受け入れるしか手段がない、そして暴力を受けたことに対して暴力で対抗する、暴力の連鎖、、、しかし暴力に対して暴力で抗しても暴力はなくならない、、、それを止めるのは自分の内で収めることしかない、暴力を受け入れて対抗しないことしか暴力は止まらない、非暴力不服従、無抵抗主義、ガンジーか、、、これに対して生徒たちは反発する、生徒と教師の問答が始まる、、、殺人はもっとも憎むべき暴力、、、法律は罰を与えるだけ、単に形を変えた暴力に過ぎない、バランスとって暴力を見えなくするだけ、それでは暴力はなくせない、許すことでしか暴力に立ち向かえない、、、そして、それに対して生徒たちは、、、そして、その後この教師は現実の残酷さを知る、、、

 

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親友3人と恋人、妻、浮気相手の織り成すニ晩の物語、ありきたりのようなあらすじなのだが観始めると嵌ってしまう濃厚な時間、誰の情熱がもっとも真実なのか!?、、、<DMC>や<偶然と想像>よりも優れているかは各人の好みで判断の分れるところだが、こんな脚本を20代前半で書けてしまう奴が『この世にいるんだなぁ』と、驚き唸らせられる、、、

 

<偶然と想像>のキャストメンバーがすでにこの頃、濱口組で勢ぞろい、、、すべては演者の「目」なんだよね、、、濱口は演者に平坦に台詞を言わせるが、それは眼を活かすためなのかもしれないと思ったりする、、、目は口ほどにモノを言うのだから、、、

 

「三つの前奏曲 第二話」が頭の中で回り続けている、しかもバイオリンの音は神経を刺激するようなキリキリした音色で迫る、、、

 

録音や画質は機械的な劣り技術的な未熟で学生映画としては仕方ない、そんなものは5分もしたら気にならなくなる、、、学生の時にすでにホンサンスを越え、ロメールをも越えていると言ったら言い過ぎか、、、いずれにしても、絶対に観るべき傑作だ、、、