増村版<痴人の愛>を観た、
谷崎潤一郎の有名な原作、中学生の頃読んだボクは、しばらく悶々とした日々を送った遠い記憶が、、、
あらすじ
精油所の技師河合譲治は酒も煙草も麻雀もやらず、上役や同僚から無類の竪物と思われているが、実は秘かにナオミという女を飼育していた。ナオミはまだ少女の面影を残しているが、譲治は理想の女を作りあげようと奇妙な執念をナオミにそそぎ、そして、ナオミと結婚した。譲治はナオミに教養をつけさせようと、ピアノやイタリア語を習わせたが、ナオミは学生の浜田や熊谷らのボーイフレンドと遊びまわり、勉強はそっちのけだった。そのうえ、ナオミがボーイフレンドの誰彼の見境もなく身を任せているという噂がたった。譲治はナオミを問いつめた。がナオミは巧みにその鉾先をそらし、かえって豊かにみがきあげられたあでやかな肉体を誇示し、譲治はその魅力に屈服するありさまだった。それは、肉欲の前にひざまずく、あさましい人間の姿でもあったが、それだけに譲治はなんとしてもナオミを自分ひとりのものにしたいと思っていたのだった。ある日、彼女の行動になお、不安と疑惑を拭いきれない譲治は、隣家の花村医師にナオミの監視を依頼した。その結果、ナオミは浜田とも熊谷とも関係あることがわかった。口論の末ナオミは家を出た。譲治には、うつうつとして愉しまない日が続いたが、譲治はナオミに関する日記と写真を焼き、キッパリとナオミと縁を切ることを決心した。その後、ナオミについて、譲治はとかくのスキャンダルを耳にしたが、もはや心を動かされなかった。ある日、うらぶれたナオミが、衣類を取りに来たことを口実に帰って来た。譲治の決心は、ナオミを目の前にするとまたぐらつきはじめた。惜し気もなく肌をあらわにして着かえるナオミは、最後の別れに襟足を剃って、ついでに腋の下もと譲治に甘えた。いつしか譲治はあえぎはじめ、もう二度と行かないでくれ、お前の言うことはなんでもきく、馬にもなる、と狂おしくナオミに抱きついていくのだった。(映画.comより転載)
安田道代(大楠道代)は、そもそも清純派だったらしい、けど、本作の体当たり演技で本格的な演技派女優への転身を図ったものの、体当たりが過ぎて、お色気路線女優へのレールに載させられてしまうことになる、、、実際、演技派女優としての確固たる地位を築くまで<ツィゴイネルワイゼン>を待たなくてはならない、、、
よく「体当たり演技」というが、言い換えれば「裸になりました」ってこと、当時の清純派がこれほどの脱ぎっぷりをみせたことは相当の覚悟があっただろうと、、、また、大いに観客を喜ばせたことだったろうと、リアルタイムで観ていない観客は想像するしかない、、、、もう一人の主役、小沢昭一はいつもながらの小沢だ、、、脇を固める村瀬幸代や若き日の田村正和、倉石功が良い、、、
いつもながら構図が良いし、編集もいい、だからテンポもある、、、大袈裟なS.E.(効果音)も当時としては面白い、、、
男の欲、女の欲、種類の違う欲、、、欲が叶うと更に新しい欲が芽生え果てしなく止まることがない、、、欲を叶えるためにバタバタともがく、子供が地面に仰向けになって駄々をこねるのと同じ、、、女なんかいくらでもいる、もっといい女がいると思うのだが、主人公はある意味純真なのだ、、、
「キチガイ」という言葉が再三使われる、、、いつしか禁句になってしまった言葉だが、キチガイが「キチガイと呼ばないでくれ」と言い出して禁句になったのだろうか?