東京暮色
小津の「失敗作」といわれる
小津の最後の白黒映画
小津版の女性版の<エデンの東>ともいわれ
山田五十鈴が唯一出演した小津作品でもある
全篇を通して「暗い」
もちろん小津作品では「寂しさ」や「悲しみ」も描かれるが
これほどまでに「暗く」「重い」作品はない
(と、思う、全作品観ているわけではないので)
小津流のユーモアもほとんどなく
あまりにも本作は「重く」「後味も悪い」ため
そのため
小津ファンからでさえも嫌われるほどの作品
ふつうに撮っていれば
ふつうにベスト10に入るだろう小津作品で
この年のキネ旬では「19位」だったそうだ
小津はガッカリして
「オレは19位の監督だから」と自嘲したという
そんな
まるで
小津の汚点のごとき作品
しかし
ボクは
この映画が大好きだ
スゴイ傑作と思っている
まさに埋もれた、呪われた傑作
当初岸恵子が演じる予定だった役を
有馬稲子が演じているが
彼女が素晴らしい
小津映画の女性ではなく
溝口映画の女性のようであり
ネオリアリズモの映画に登場する女性たちのようでもある
ラストちかく
深夜のラーメン屋で男と向かい合う時の
彼女の厳しくそして暗い目にそう感じる
(画像無し、残念)
彼女が
カメラに正対する姿に引き込まれる
山田五十鈴の存在と共にこの映画では印象的だ
『小津らしさが無ければダメ』と排除するのではなく
正当に評価されて然るべき傑作だ