たふえいんといなあふ 不思議な魔法の言葉 

No Movie, No Life、、、映画と食べものと、ときどき天然妻、、、

埋もれがちな傑作/しゃべれどもしゃべれども


昔昔
うちの会社から顧客にスタッフを派遣することになった

しかし
一週間すると顧客から電話が入った

「うちの会社若い社員たちでしょ、来てくれた人、年齢が上だし、
無口で溶け込めないと思うんだけど、代えてくれない?」

それに対してボクは

「あの、御言葉ですが、若ければイイですか?
口が上手くて、調子が良ければイイですか?
不動産屋ではないけど
日当たり良くて、間取りが広くて、駅から近くて、家賃も安いなんて
なかなかないですよ
何を優先するかですよ
ボクはキチンと仕事をする人を選びました
間違いのない人を優先しました
彼は20年以上一度もミスはしていません
御社の信用を失わないために人選しました
若いのもいますよ、イケ面もいますよ、面白いのもいますよ
代えてもイイですが
黙って1か月使ってみてください」

顧客は渋々電話を切った
そして
1か月後に再び電話をしてきた

「変えなくてイイから、今の人でイイから
もうすっかりうちの皆からお父さんお父さん言われて馴染んだから」

「そうですか、そりゃ良かった
ところで、この1か月で何かありましたか?」

「うん、それがね、2、3度うちの社員のミスを
事前に食い止めてくれてね、非常に助かりました
言われてもいないのに書類を確認してくれてミスを見つけて
あれがクライアントに渡っていたら大変なことになりました
たっふぃーさんが言った意味が解りましたよ」
「でしょ、
若くても喋りが上手でもイケ面でも仕事ができなくてはダメでしょ
彼は口下手で無口で時々口を開いてもボソボソ言う
でも、仕事は間違いないんですよ
ミスをしない真面目な人材を優先して人選しました」

喋りが苦手だから伝わらないわけではないですね
相手を思う気持ちは言葉がなくても伝わります

前置きが長くなった



この映画
自分は「名作」と思っている

すくなくとも
ここ10年間の邦画では
ずば抜けて良い

言葉だけでは伝わらないものもある
気持(心)は言葉でなくとも伝わる

これがこの映画の総て

そんな物語を
噺家が主人公というのが
皮肉で洒落てる

落語は「言葉」が総てだから
「言葉」で伝えるものだから

その主人公の元に
口下手で不器用な人たちが集まる
設定が上手いね

国分太一が頑張ってる
俳優ではないけど
アーティストだからね、タレントだからね
芸事に馴染むね

香里奈がイイ
<マスク>でキャメロンディアスが登場したカットのように
香里奈登場シーンはハッとする

伊東四朗がイイ
太一の師匠で<火焔太鼓>が十八番だ
太一も挑戦する

<火焔太鼓>は
5代目志ん生の持ちネタ

そもそも志ん生
師匠の小ネタを膨らませて
名作<火焔太鼓>を新作落語として生み出した
ひさひさに
志ん生が聴きたくなる

言葉で伝えよう伝えようとしても
伝わらないものがある
でも
言葉でなくても
心が通じ合う伝わる一瞬がある