たふえいんといなあふ 不思議な魔法の言葉 

No Movie, No Life、、、映画と食べものと、ときどき天然妻、、、

埋もれがちな傑作/女の座

監督は成瀬巳喜男
込み入った複雑な
出演者の多い家族の話を
分かりやすくスムーズに
そしてハラハラ、ドキドキしたり
物語に食い入ってしまったり
喜怒哀楽入り乱れて
よくも、2時間弱でまとめ上げたと感心する
ハイパージェットコースターホームドラマ!

それが<女の座>

成瀬作品は随分観ているつもりでいても
重要な重要なこの作品は見逃してしまっていたのだ、、、

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父、笠智衆(重体となり家族全員を家に集合される原因となる)
母、杉村春子(後妻のため家族では控えめ)
母の元夫との子、宝田明(頭脳明晰、ハンサム、30年ぶりに母と再会したが、)

戦死した長男の嫁、高峰秀子
(家族の中心的働きをしながら血縁でないため虐げられているような立場)
その息子、大沢健三郎くん(ゆくゆくは家を継承する立場のため期待されている)
長女、三益愛子(後妻の母にも近い年)
その夫、加藤大介(浮気症)
次男、小林桂樹(ラーメン屋、あまり裕福ではない)
次男の嫁、丹阿弥谷津子(ほかの姉妹に比べて裕福でなく不満たらたら)
次女、草笛光子(生け花の先生、独身、宝田明に一目惚れ)
三女、淡路恵子(夫が無職のために家に転がり込む)
その夫、三橋達也(九州から妻と実家に転がり込み居座る)
四女、司葉子(会社が倒産し失業中ながら、縁談多し)
五女、星由里子(映画館で働く明るく活発な子、四女と恋の駆け引き)

ラーメン屋の客、夏木陽介などなど

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とにかく総ての出演者に事情があり
よって皆んな身勝手な考えを持つ

いろいろと間に入り動き回るデコちゃんだが
しかし家族の中では軽んじられている

唯一、息子がこの家の長男のため
家を継ぐ立場だから
息子にかける期待は大きい

ところが、事態は思わぬこととなり、、、

そして、
みんながみんな自分の私利私欲のために
勝手なことを言い始める

老いた父、母だけは、デコちゃんのことを想い
三人だけで一緒に暮らそうと
親切な申し出を提案するが、

この3人だけは
まったく血につながっていない者同士なんだよね

そして
その思いやりを感じる申し出さえ
ボクには、これさえも老いた二人が
この先介護を望む魂胆が透けて見えるんだよね
結局、全員自分のことだけしか考えていない!ってね

ボクの心が薄汚いから
そういうひん曲がった解釈しちゃうのかもしれないけど

自分の子供たちではアテにならないから
優しいデコちゃんに頼っているように感じちゃうんだよね、、、

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これだけの登場人物を束ねる成瀬の手腕が凄い

映画の場合
演者は視線を監督から厳しく指示されるね

その視線の先に
そのキャラの敵意や好意や嫉妬や怒りが込められることになるから
この視線が誤ると映画はおかしなことになって成立しなくなるんだよね

だから演者は視線の先と共に
その時の感情を目に込めて演じなければならない

1つのショットに大勢が入っているときに
それぞれの視線を見ることは
映画を観ていて重要なことだし
観客として楽しいことでもあるし
ボクにはスリリングにさえ感じる

この映画ではその楽しさが、存分に味わえるのだ、、、、

ま、
これはとにかく凄い映画ですよ

ドロドロした感よりも
軽快でコメディ調でもあるから見やすく
観た誰もが高い評価を下すだろうと思う傑作だ、、、

これを観ずに成瀬は語れない!

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