イーストウッドものは
たいがいロードショーの初日に観るのだが
今回は見逃していた<15時17分、パリ行き>をDVDで観た
レビューの多くが酷評で
それだから、逆に観るのが楽しみでもあった
やはり、酷評には当たらず
ボクはそこそこ、ほどほど、ふつうに
イーストウッドらしく
好意的に観ることができた
思えばイーストウッドは
彼のキャリアの中でも
代表作の一つといえる<ミリオンダラーベイビー/MDB>を境に
<父親たちの星条旗>以降
実話をベースにした作品が非常に多くなった
これは、この傾向は、どういうことなのだろうか
フィクションの中にある異質な部分に違和感を感じはじめ
よりリアルな方向に舵を取りはじめたのだろうか?
逆に<ミリオンダラーベイビー>の直前の作品は
ミスティックリバーであり、ブラッドワーク、スペースカウボーイ、トゥルークライム、目撃、と、
こうして<MDB>以降の実話ベースの作品と比べてみると
明らかにイーストウッドの方向性が変わっていることを感じないだろうか?
ボクにはまったく変わってみえる
もちろん
実話ではないが
<MDB>以前の趣と比べると
より現実路線にあると感じる、、、
今回は<15時17分、パリ行き>
「再現ドラマのよう」とか「観光番組」とか
面白い評をたくさん目にしたのだが、
ある意味それは正しいし
しかし
その言葉に批判的な意味を込めているのなら
明らかに誤りだ
この映画の良さは「構成」と「再現性」
「起・承・転・結」とは少々違う
4ツのパートからなる構成
主人公たちだけを対象にした
子供時代パート、入隊時パート、観光パート、事件再現パート
各パート約20分づつ*4パート、映画の理想の形
非常にシンプルで煩雑さを省いた構成であり、
テロの犯人側を描いたり
それに至る理由に踏み込むようなことをしなかったのは
この作品を成功に導いており
さすがイーストウッド!と思うねえ
それをほぼ同じ場所で
登場人物に至っては実際の人を主人公に据えほど
徹底して「再現」してみせた
前作<ハドソン川の奇跡>のエンドクレジットで
事故に関わる実際の人々を登場させたように
それを更にドラマにまで登場させ
まるでベッケルの<穴>のような
物語に真実味を持たせる試みは
たいへん成功しているといえる
そう、そこにはもはや「再現」ではなく「真実」が映し出されている
記録映画を除けば
これ以上の再現性は成し得ない、、、
意外とアクションシーンが少なかったから?だから退屈なの?
イーストウッドはそういう人ではないよ
ふつうの娯楽監督とは少々違う
それがイーストウッドの良さでしょう
なのに何故そこらへんがツッコミどころになるのだろう
たとえば
列車の中で犯人を取り押さえたら
ふつうのアクション映画なら
そのあと勲章の授与シーンに移ってハッピーエンドで「完」だよ
ところが
ここでは警察が来る、救急隊が来る
主人公は駅のベンチの腰かける
そんなの普通のアクション映画ならどうでもいいことだから描かないよ
でもイーストウッドはそれらを映すね
モタモタしているわけではないんだよ
なぜここまで酷評されるのか
ボクにはむしろ疑問だ、、、
4☺