たふえいんといなあふ 不思議な魔法の言葉 

No Movie, No Life、、、映画と食べものと、ときどき天然妻、、、

埋もれがちな傑作/立ち去った女

よほどのマニアでない限り
日本では埋もれがちだよね

<マニラ・光る爪>という
映画史に名を残す名作があっても
日本では埋もれているよね
映画マニアを自称する人でさえ知らないよね

しかし最近では
世界中から注目されるようになったフィリピン映画
その先頭に立つのが
この映画の監督・ラブディアス
といか、ラブディアス「怪物的映像作家」と呼ばれているようだ

2016年のヴェネツィア映画祭で最高賞を受賞した本作だが
昨年日本でも静かに上映され
キネマ旬報の年間ベストテンの洋画5位に選出された
審査員の多くが観ていないようなので
「実質的な1位ではないか」とも密かに囁かれている

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何ぶん4時間弱の作品だ
観るには勇気と気合が必要とされるが
ボクはサラっと一気に観ることが出来た

だからと言って
面白い展開、興味深い物語が用意されているわけではない

おそらく本国フィリピン人の観客は
退屈のあまり爆睡することになるだろう

それでも
そんなフィリピンでこのような作品を撮った
監督の意志の強さを感じる

ハリウッドの娯楽作品や
スリリングなアクション映画に慣れ親しみ
物語やアクションで映画を楽しみ評価する人たちには
耐えられない類の映画かもしれないが、

そこには
まさしくモーションピクチャーが成立していた

物語で繋ぐ映画ではなく、情景で紡ぐ映画なのだ、、、

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もしくは
最近都合よく使われている言葉「モダンノワール
それこそこの映画に相応しい言葉のような気がする
そうだね、これが現代のフィルムノワールだね

フィルムノワール好きには
たまらない作品だと思う

フィルムノワール好きに
その理由を訊ねても的確な答えは導き出されない
その雰囲気、その空気が好きだということを
それ以上の言葉で表現できないからだ、、、

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ストーリーは単純だ
罪を被せられて30年間刑務所に入れられた女が、真犯人の自殺と共に黒幕の名を知る、それは昔の恋人だった、出所した女は復讐のために男の暮らす町を目指す。その間に知り合う人々の交流と、誰にでも優しい彼女を慕う人々、そしていよいよ復讐の時が来た、、、

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さて映画は
静かで美しいモノクロのシーンが映し出される

そして、
数分で気づく、これはヤバイなと、、、

徹底した1シーン1カット
ボクはカット数をカウントしながら観ることにした

3時間48分=228分に188カット!
約4時間ちかくの尺でたったの188カットだ
マイケルベイなら10分で費やしてしまうカット数だ

しかも
クローズアップどころか寄りの画は一切ない
すべて引いた画、それは屋内であっても同じ

そして
後半にやっと動き出したキャメラで2カットと
狙ってピンを外した数カットを除いて
すべてFIXだ

引いた固定の画の連続というわけだ
それが延々ほぼ4時間

しかし
どのカットも計算された構図で素晴らしい
美しい白黒写真を見るようだ、、、

映画ファンを自称する人は、観るべき一本、、、

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