たふえいんといなあふ 不思議な魔法の言葉 

No Movie, No Life、、、映画と食べものと、ときどき天然妻、、、

映画感想/パターソン

評判だった昨年の作品<パターソン>を観た

監督のジムジャームッシュ
ウィリアムカルロスウィリアムスの詩集<パターソン>に感激し
NYからほど近いパターソンという街を訪ね、街に惚れ込んで、
この作品を撮ることを決めたのが25年前、だそうだ、、、やっと実現

昨年の日本映画
<映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ>と発想が似ているね
でもアプローチがまったく違うような気がする

決して満足した生活ではないかもしれない二人の労働者という共通はあるが
そして近くの女性、近くの仲間もいるが
主人公の人生に対するスタンスが違うね

ま、
日本と米国の異なった社会、生活を対比しても
あまり意味がないかもしれないが、
期せずして同じ頃に
同じように詩をベースにした作品が存在したのが興味深い

パターソンという街は映画の中で
たいへん美しく、非常に平和なように描かれている

しかし実際は
多様な人種が暮らし
とくにイスラム圏の人種が多く住み
その中には非常に過激な人たちもいるそうだ

夜の街で
怪しげな若者たちが主人公に声をかける場面もあったね
だから
映画から単純に受ける平和なイメージばかりでもないようだね

主人公は非常にフラットな人物で
黒人たちが常連の店に毎日のように顔を出し
職場ではインド人の同僚と仲が良く
主人公自身の奥さんも中東の女性のようだ

主人公の名前は街の名前と同じだ
大森の「大森さん」渋谷の「渋谷さん」上野の「上野さん」みたいなものだね

そんなパターソンのパターソンさんが
いつも見る街からインスピレーションされる言葉を使って
詩を紡いでいくんだね

彼の一日は些細なことで成り立っているのだよね

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物語は
ニュージャージー州のパターソン市に中東系の奥さんと小さいながらも幸福に暮らすバス運転手の一週間の日常を描く。彼は詩を書くことが好きで一冊のノートにイメージされた言葉を連ねていく。しかし、ある時大切なそのノートが愛犬によって失われた。悲観に暮れる彼だが、たまたま出会った日本人の男によって明日が見えてきた気がした、、、

OHIO
BLUE TIP
MATCHES
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ささいなこと
ほんの些細なことに心を動かされる感受性
それが詩人なんだよね

ちなみに
ジムジャームッシュの出身はオハイオなんだよね

本編で印象的なこのマッチも
実際に存在したもので
今は製造されていないから美術部に復刻版を製作させたようだ
「世界で一番美しいマッチ」と、主人公に言わせるセリフがあるね

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街に関する有名人の名前も数々登場する

ボブディランの曲<ハリケーン>に登場する歌詞「パターソンではそれがやり方だ」(In Paterson that's just the way things go)というのはボクサーのルービン”ハリケーン”カーターのこと(Wikiより)

このボクサーの名前も本編に登場し
映画<ザ・ハリケーン>はその彼についての映画だが
バスの中で子供たちがデンゼルワシントンが彼に似ていると言うのも
その映画に関して言っているのだね

そして
この街で最も有名な出身者のようだ

銅像があると言う話や
映画のポスターも映るね


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演出的に巧いなぁと思ったこと

夜の散歩中に声を掛けられた不良グループ
彼等は主人公に
「その犬、高いんだろう?気を付けて、守ってやりな」と言って去る

それ以降、観客としては(特に犬好きとしては)
主人公が毎日のように通うバーの外でつながられる犬が気になって仕方ない
『きっといつかこの犬が事件に巻き込まれるんだろうなぁ』と、

(ネタバレ注意)→しかし、肩透かしを食らったように意外にも何も起きない
この肩透かし感が何ともいいね


ラスト近辺のエピソードがまたまたいいね

フラっと日本人(永瀬)が主人公の前に現れるね
そして「自分は詩人だ」と言い切るね

それまで
自分を「バスの運転手」で「詩を書くのが好きだ」として
自分を決して「詩人」とは名乗らなかった主人公に
変化を与えるだろう言葉だね

永瀬がWカルロスWで
パターソンがジムジャームッシュ自身なのではないだろうかと感じた一瞬だった

もしくは
WカルロスWが日本人の姿を借りて
パターソンに声を掛けに来たというファンタジーなノリでも素敵ではないか、、、

永瀬の登場するラスト近くのほんの数分のシーンは
「彼はとてもすぐれた俳優だ。ラストの永瀬とアダムのシーンはすごく人間味があって、美しいシーンに仕上がったと思う」と
監督本人が満足げにそう語ったように非常に良かった A-HA~

このジムの作品は
小津の映画のように
独特の空気感をもち
クスッとさせるようなユーモアに満ちている、、、

4☺/5☺中

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本篇ではたびたび登場する印象的な素晴らしく美しい滝
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A-HA~な1シーン