たふえいんといなあふ 不思議な魔法の言葉 

No Movie, No Life、、、映画と食べものと、ときどき天然妻、、、

埋もれがちな傑作/群衆

いやぁ
これこそ埋もれがちな傑作

本当は埋もれてなんかないんだけど
若い人たち無声映画を観ないからね
これからサイレントはどんどん埋もれて行ってしまうね

第1回のアカデミー賞では
芸術作品部門において
大傑作<サンライズ>に敗れたものの
肩を並べて候補にあがった作品

驚くべき芸術的なセンスと
当時としては非常に高度な技術をみせた<サンライズ>と張り合うように
のちに傑作<白昼の決斗><ステラダラス>を生んだ
名監督キングヴィターの<群衆>も目を見張る技術を披露している


このシーンは
キャメラが上空に浮上し
そしてビルに入り込み
主人公の席までクレーンアップする

途中、カットはディゾルブされるが
それでもそのキャメラの動きは
1920年代の当時の技術としては凄い

ビルは模型と思われる
今でいえばCGで作られたような画像を
アナログで処理しているわけだ
だから凄い


ラストシーン
これも目を見張るクレーンバック
この時代のこのレベルは凄い
1928年の作品

イメージ 1

物語
そんなに裕福ではないが
中流階級で厳格な父から育てられた男の子
12才の時に父親は急死する

家の前に救急車が止まる
友達に促されて恐る恐る家に近寄る男の子
近所の人たちがあっという間に集まる
心配して、もしくは興味本位の人だかりの中を
男の子は不安げに階段を上がる
画も良い、いいシーンだ

母から父が亡くなったことを知らされ
「お父さんが期待していた通り、立派な人になるのですよ」と告げられる

大人になった彼はNYに上京する
保険会社のサラリーマンとして出世を目指して一生懸命働く

ある日
遊び人のいいかげんな同僚に女性と2対2のデートに誘われ
最初は「家に早く帰って勉強したい」と断るが
しかたなくついて行くことになると
現われた女性に一目ぼれ
2階建てのバスに乗り込みコニーアイランドを目指す

NYの街を走るバスの2階から
群衆を見下すように眺めていると
サンドイッチマンのピエロが目に入った

「あんな奴らは一生出生できないな」と笑う男を
女は軽蔑の眼差しで注意するが
二人は次第に相思相愛、結婚にまで至る

結婚後
男は女房に口うるさい、いつも上からモノを言う
行動も自分勝手で、とうとう女房はキレて家出を口にする
男は女房を止めず、さっさと先に部屋を出る

女房は冷静になり
窓から男を呼び止める
男が下で、女が上の位置関係
このシーンから男と女の立場に変化がある
上手い

イメージ 2

女は妊娠を男に告げる
息子と、数年後には娘が生まれた
それ以来、男は子煩悩で家族を大切にする

しかし
いつまでたっても男は出世しない
男の口癖は「いつか必ず、もうすぐ必ず、出世するから」
女房は次第に不満を募らせる

立派な男、出世する男を目指しているのに
遊び人の同僚の方が先に出世した

そしてある日、下の娘が死ぬ

自暴自棄になった男は
暴れて会社を辞める

それ以降
良い職には就けず
妻の内職に頼る生活

すぐにあきらめ仕事の続かない男に呆れ
妻はとうとう家を出る決心を固める

その後
自殺を思いとどまり
息子から「ママとうまくいってなくても、ボクはパパが好きだよ」との言葉に

男は我に返り、必死に仕事を探す
どんな仕事でも構わない
とにか必死に何でも働くぞ

そして見つけた仕事が
サンドイッチマンのピエロ、、、

職業、給料、出世に関係なく、どんな仕事も、働くことは尊い
生きること、食べること、そして家族の大切さ

誰でも
群衆の中の一人の人間でしかないのだ

チャップリンをはじめ
サイレントの昔の時代の映画は
人間の大切なことを教える映画が多い

素晴しい作品だ、、、