昨夜
ノーベル文学賞の発表があり
日系英国人のカズオイシグロ氏が
その栄誉に輝いた
毎年
村上春樹の受賞を期待して盛り上がる
日本人には複雑ながら嬉しい知らせだった
毎年期待されながら受賞できない村上春樹だが
過去もっとも受賞に近くありながら
受賞できなかったとされる作家は
安部公房である
ノーベル賞はもはや確実であったとの
ノーベル賞関係者の証言もあるので
安部公房がもうすこし長生きしていれば
安部自身が脚本を担当し
勅使河原宏監督により映画化もされ
その映画はキネ旬の1位
本家アカデミー賞では
監督賞と外国語映画賞の候補にもなった
内外から高く評価された超名作だ
それなのに
その割には
現在では「扱い」が小さいと感じる
まさに砂に埋もれてしまっているようだ、、、
物語は、休みを利用して砂丘に昆虫採集に来た教師が、その部落の人に奨められるがまま一夜を宿で過ごす、その宿は蟻地獄のような砂の壁に囲まれ一人の女が暮らすバラック小屋、、、主人公は仕組まれた罠によってそこから逃げ出すことが出来なくなる、、、
美しく
観る者を圧倒するビジュアル
たった一つのボロ小屋と砂の壁だが
そのセットが凄すぎる
セットを見るだけで
その撮影現場の苦労を知る
前半は徹底した不条理劇
あっという間にスクリーンに引き込まれる
人間は虫のように
その与えられた環境の中で生命を維持する術(すべ)を身に着ける
そしてその狭い社会に適応すると
そこから逃れることもしなくなる
好き嫌いを挟まず
映画の出来だけでいえば
<砂の女>が、もっとも優れているような気がする
と、思うボクなのだ、、、
映画マニアを自称する人で
まだこの作品を観ていない人は、観なさい
観ないと邦画は語れない、、、
この映画の照明技師は久米光男氏
(光男、、、光の男、まさに照明マンに相応しい名前)
ボクは昔この久米さんと仕事をし
久米さんの家で催す新年会に招かれたこともある
数年前になくたったが
長年「日本映画テレビ照明協会」の会長も務め
勅使河原監督の<おとし穴><他人の顔>といった名作に携わり
大御所としての風格よりも
親しみやすい気さくな近所のおじいちゃんというのが
ボクの印象だ