たふえいんといなあふ 不思議な魔法の言葉 

No Movie, No Life、、、映画と食べものと、ときどき天然妻、、、

埋もれがちな傑作/ミルドレッドピアース

Mildred Pierce


マイケルカーティス監督本人が
カサブランカ>よりも
彼のキャリアの中で「一番好きな作品」と言い残したのが、この作品、、、

ヤフーのブログで検索すると
誰もレヴューを書いていない作品なので
「埋もれた」作品と言っていいだろう
なので、まずはボクが書き始めてみる

日本では長らく劇場未公開だったこの作品
誰かが「面白い」と言い出して
だんだん観る人が増えていき
みんなが「面白い」という声をあげ語り出すと
評価されだしたということになる

こういう埋もれた傑作こそ
多くの人に観てもらい、語ってもらえたらいい


母、娘、男たちの「五角関係」ペンタゴン

夫が殺され
前夫が容疑者に上がり
参考人として呼ばれた妻は
犯行を否定しない前夫を「犯人ではない」と語り始める、、、

殺人事件のミステリーは
複雑な人間ドラマへと進む、、、


フィルムノワール
ファムファタールは主人公・ジョーンクロフォード

女は全てを二人の娘に捧げている
娘優先の生活、家計
甘まやかされ育つ娘

両親の離婚話に動揺することもなく
あっさりした態度で
関心は新しい洋服のこと

「早く離婚して、好きでもない金持ちの男と結婚して、私たちに贅沢させてよ」と、
母をそそのかすティーンエージの娘

この映画の本当のファムファタールは娘、、、


ふたりの可愛い娘たち

どちらの女優も
その後活躍をしていないのが不思議なほどだ

とくに長女役のアンプライスは
この年のオスカーでは
助演女優賞の候補にもなっている


原作は
郵便配達は二度ベルを鳴らす>で有名なジェームズMケイン

しかしながら映画は
原作よりもかなり脚色されているそうだ

とにかく撮影が良い、役者が良い、脚本が良い
作品、脚色、撮影など7部門でアカデミー賞にノミネートされている

撮影監督はアーネストホーラー
名作<風と共に去りぬ>、大傑作<西部の人>、そして<理由なき反抗>のほか

<何がジェーンに起こったか?>では
犬猿の仲のベティデイヴィスとジョーンクロフォードの仲を
取り持つ意味でも撮影監督に抜擢された

それほど
多くの名優から信頼される大キャメラマン

本作でも
たしかなキャメラワーク、凝った画の数々で
フィルムノワールの傑作に仕上げている


そしてジョンクロフォード
愛と憎しみの伝説>を観ると彼女の歴史がわかるが
MGMからワーナーに移籍したばかりで
初のオスカーを受賞した通り
この複雑で難しい役を演じ切っている


ラストシーン
廊下のシーン
二人のメイドがかがんで廊下の床を拭いている

淀川さんは言いました
スクリーンに映っているものすべてに意味があると、

なぜ監督は廊下の床を磨いている演者を、フレームの中に置いたのか?

それは
この物語の底辺にある意味からくるのですね

劇中
娘がお母さんを罵倒します
「お母さんの出自なんて、ひどいじゃないの!」

娘は上流階級への憧れが強いのです
母はその望みさえ叶えてあげようと必死に働きます
しかし血筋は埋め合わせることが出来ないのですね

まったく同じラストを観たことがある
黒澤明の<天国の地獄>ですね
三船が歩く警察の廊下で膝をつけて掃除する人たちがいる

山の上の人たちと、下の人たち、、、

そういうことを
マイケルカーティスも黒澤も
廊下のたったワンカットで暗示し描くのです

ま、制作年から考えると
黒沢がパクったと思うのですが

いや、この映画、ずっと日本では未公開でした、、、


新旧今年観た中で一番好きかも、、、

素晴しい傑作
ぜったい観るべき作品

最後にもう一度

マイケルカーティス監督本人も
カサブランカ>よりも
彼のキャリアの中で一番好きな作品と言いました、、、