たふえいんといなあふ 不思議な魔法の言葉 

No Movie, No Life、、、映画と食べものと、ときどき天然妻、、、

映画感想/おみおくりの作法(復刻)改訂版

ボクがブログで
はじめて書いた
映画感想
再び

原題は「Still Life」
静物画」の意味だそうだ

イメージ 1


たしかに静かに静かに物語は進行する
葬儀の時に息を潜めて物音をたてないようふるまうように
そんな静寂が漂いながら映画は進行する

邦題「おみおくりの作法」は
シャレてはいるが
「作法」という言葉はちょっと違うように感じる

孤独死の人たちを見送ってきた男も、また孤独だった
その「みおくる」役割を続けてきた男の話し

死者がどんな人生であっても
死者に対しては敬意を払い「みおくる」
それがこの映画


私も
たった一人で見送ったことがある

私の古くからの知人で
身寄りのない老人の面倒をみていたことがある
面倒といっても部屋を無償で貸しているだけで
あまり世話を焼くわけではない

しかし体調が悪くなり
独りで生活するには厳しくなったので
嫌がる本人をよそに区役所に相談し
養護施設に入所させた

施設は都心から非常に遠く離れていたが
生活に関しては至れり尽くせりで何よりだった
しかし、孤独を愛する彼はたびたび施設を抜け出し心配させた

3食、2名相部屋、大風呂、散髪屋、週に一度は銀行や医者の出張サービス
日中は外出自由、春と秋には旅行、お小遣いの支給、洋服の支給、
施設への支払いは年金の何割か、年金のない人は無償だ

なにが不満なのか?と𠮟ったことがあるが、

彼はポツリと言った
「男連中は皆仲良く、サッパリしていて良いのだけど、女連中の質(タチ)が悪い、女はいくつになっても女の悪さを持っている、たとえ80、90になってもね、女性も表面上は良いのだけど、女性はいない人の悪口を言う、あれがすごくイヤなんだ、本人がいる時といない時では全く別人のようで、それがほとんどの女性連中に蔓延している、そんな場にいたくなくなるよ、イヤだね」

それでも抜け出し行方不明になるたび
再三𠮟ったので大人しくなったが
顔を出すたびそんな人間関係の不満を口にした

そして
ある時一本の電話で急な訃報を聞くこととなる、、、

彼には身寄りがなく
葬儀は行われず
指定の時間にボクは焼き場に行った

そして職員に案内され
火葬場の係の人と私だけで、彼を見送った、、、

送る人が大勢で盛大な葬儀でなくても
たとえ故人が地味で孤独な人生を送ったとしても
死者は他の死者と隔てなく同等に神聖に感じた


[汝、欲するものを他に与えよ]
まさしく
その言葉のようなこの映画のラストシーン

なかなかの秀作でした、、、