ヘアサロンを経営する奥さんが
旅行直前に
夫の髪を切ってあげているファーストシーン
カットの割り方(編集)がイヤで
主人公の夫の態度がイヤで
好きになれない始まりだ
しかし、ラストに効いてくる
その後
この奥さんが亡くなると
『次に髪を切るのは誰かな?』
『そのシーンが恐らくラストシーンになるのだろうな』と
ボクの興味はそちらへ移った
しかし物語は
主人公に似合わない
生活臭のする空間の擬似体験へと進む
最初は好奇心からか
もしくは作家である自分の本能から
母を妻を失った小さな家族の世界、生活を体験する
主人公は
自分も同じ境遇であるにも関わらず
「残された家族の気持ち」を知ろうとするかのようだ
これはブラックなユーモアなのか!
子供のいない主人公にとって
子供と接しているときは「反・自分」であり
何も自分を主張することがないが
自分が必要とされない日が訪れたときに
恥ずかしげもなく子供の前で
はじめて自己を開放する
小さな家族が再生に向う時に
自分は妻の死を境にしても何も変わらなかったのだ
子供を「リスク」と言い
自分の「幸せの尺度」を語りながら
子供を作らなかったのは「死んだ妻のせい」だったと言う
男の「結婚」や「家族」「妻」に対する
アイデンティティの希薄さをさらけ出す
永い言い訳には真実がない
そして「短い真実」は
シャボン玉であり
花火であり
セミのようなものだろう