たふえいんといなあふ 不思議な魔法の言葉 

No Movie, No Life、、、映画と食べものと、ときどき天然妻、、、

映画感想/リコリスピザ

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PTA組ともいえる亡きフィリップシーモアホフマンの息子クーパーホフマンとミュージシャンのアラナハイムの映画初出演の二人を主人公に据え、実話ベースの話を主人公男女に起こるエピソードとして散りばめ連ねた青春の数年間、、、題名の「リコリスピザ」は本編と直接的な関係はなく、黒く酸っぱい甘草の「リコリス」と平たい円盤状の「ピザ」から「黒く薄ぺったい円盤」=「レコード」懐かしさをイメージしている、また舞台となったL.A.にはリコリスピザという店名のレコード店が実在していたそうだ、、、

 

 

ハラハラドキドキ、奇想天外な展開のストーリーや派手なアクションを映画に期待する観客の賞賛は得られないかもしれないが、ボクはとても好きなタイプの映画だ、、、今やノーランとPTAの二人は抜きんでている、共通点はフィルム撮影、今回も70年代を表現する色調を見事に再現している、ほか逆光や移動撮影に目を見張る、、、

 

 

他のレビューで目にするのは、15、6才の高校性が10才年上の女性に恋をすることに対する違和感を感じるというもの、、、でもね、これは70年代グローイングアップ物の再現で、その手の映画が全盛だった(80年代前半まで)頃を懐かしむものであり、年上の女性に少年が憧れるのは全く不思議な事ではなく、実際監督もファーストシーンのエピソード(主人公男女の出会い)は実話だと語っているから日本人の感覚では驚き違和感をも持つかも知れないが、ま、そこは米国ならではのマセガキってことで承知したい、、、

 

 

もうひとつ違和感としてレビューで目にするのが主人公の女性が憧れられるほどの美貌がないということ、、、あ、それはPTAだからね、<ファントムスレッド>の時も同じような感想が多かった、そう思う人達は銀幕の世界は夢の世界でなくてはいけないと思っている人たちかもしれないが、PTAはむしろ反クラシックハリウッド派ともいえるからね、主人公が絶世の美女でなくて良いのだよ、、、

 

 

ショーンペン演じるジャックウォーデンはウィリアムホールデンのことだそうだ、「トコサンの橋」はホールデンの主演映画トコリの橋を連想させるし、そしてそのショーンペンいやウィリアムホールデンが呟く「君はグレースだよ」は<トコリの橋>の共演グレースケリーのことだ、、、あの美しさに匹敵する存在はなかなかいないが不美人なこの主人公にグレースケリーを重ねるあたりがPTAらしい、、、

 

 

ブラッドリークーパーが演じるのは、そもそもバーブラ担当のヘアメイクアーティストで恋人でもあり、のちにその縁から<スター誕生>のプロデューサーにもなり、その後いっぱしのプロデューサーとしてはハリウッドを渡り歩くジョンピーターズだ、ここのエピソードも笑えるし、女が運転するトラックは<恐怖の報酬>並に緊迫する、、、ピーターズは女たらしの自分の役を<アリー/スター誕生>の色男ブラッドリーが演じることを喜んで快諾したそうだ、(が、バーブラの許可は得たのだろうか?)、、、

 

 

いつからあのウォーターベッドはこの世から消えたのだろうか?そのウォーターベッドとの縁で登場するオヤジが何とディカプリオのお父ちゃんだそうだ、レオパパが短い尺ながらもしっかり爪跡を残している、、、

 

女が憧れていた男の秘密を知るシーン、他の演者はカットを割って撮るが、女だけは常に鏡の中で表情を捉える、なかなか巧い、、、

 

そういえばファーストシーンの移動撮影で、途中キャメラのポジションが切り替わる、イマジネーションラインを超え突然真逆の位置に持って行かれて歩む方向も反対になるのは不思議な感覚で面白かった、、、

 

PTAといえばアルトマン作品との対比をしてみたくなるところだが、<ナッシュビル><ザプレイヤー>の要素が少しある程度にしか感じなかった、、、

 

 

男と女の年の差を埋めることはできないし、女が新しい恋を見つけるたびに結局は男の元に戻るがそれ以上には進展しない、しかし少年はその年の差と距離を縮めようと必死にあえぐ青春のほろ苦く胸の苦しい物語、とてもとても良い映画だとボクには思えるのだが、、、

 

4☺

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