たふえいんといなあふ 不思議な魔法の言葉 

No Movie, No Life、、、映画と食べものと、ときどき天然妻、、、

映画感想/由宇子の天秤_A BALANCE

 

<新聞記者>と同系統のような映画だが、脚本は更に上を行っている、、、ドキュメンタリー番組のディレクターとしての主人公と、塾講師であり塾長の娘である主人公が同時進行で二つの問題を抱える日常、この二つの局面がまったく離れていない感覚、どこか重ね合わせられる距離感、とても良くできた構成だ、、、ただね、2時間半あそこまで引っ張られて観せられてきたのにあの終わらせ方でいいのか?ハネケなら仕方ないけど、これはそれでいいの?それだけが残念だ、、、

 

ドキュメンタリーを撮る姿をドキュメンタリータッチで撮ったのだが、、、ドキュメンタリーは記録映画ではない、作り手の意図、主張、思想が反映される(それに悩むディレクターとしての主人公でもある)、、、「フェイク」も有り得る(加害者は誰だ?学校?報道?ネット?市民?)それがドキュメンタリー、、、優れたドキュメンタリー作家でもあり、その筋のカリスマである原一男の師匠でもある今村昌平はそういうドキュメンタリーというもの自体を<人間蒸発>の中で笑ってみせた(これには驚くべき余裕と人間の器の大きさを感じた)、、、ドキュメンタリーといっても所詮は誰かの意思によって作られる作り物なのだ、、、

 

全編、音楽がない、いや、冒頭で男が縦笛を吹いている、これだけ、、、全編冷たいほどに暗い色調で決して明るいショットを映さない、感情を示す音楽すら許さない徹底ぶり、、、

 

瀧内公美が映画を引っ張り続ける、主人公の彼女の視点で前へ前へと物語は進む、、、抜群の存在感だが、たとえば日本アカデミー賞ではノミネートすらされず、、、

 

P.S.

もう何度も何度も言っているのだが、映画を語る上で今村昌平の<人間蒸発>は鑑賞必須映画なので絶対に観ていただきたい、、、映画というもの、ドキュメンタリーというものを考えさせられる重要な作品なのです、、、

 

3.5☺