主人公(デコ)の夫(小林桂樹)は地方の町で家業の薬屋を継いだ次男だが、最近はあまり繁盛していない、家計は苦しいのだが、いつまでも母親は昔の裕福だった頃を忘れられず娘の結婚にも金に糸目をつけない(30万/今なら600万?)が、娘は乗り気のない縁談で結婚して後悔している、、、空いている土地を利用して喫茶店を始めようとする次男夫婦だが資金が足りない(100万/今なら2000万?)、、、銀行を頼りに交渉した相手は学友の兄(三船敏郎)だ、なにかと心配してくれ、どうにか資金を調達できそうな目安が付いた頃、家を離れていた長男一家が上がり込んできた、何やら事情があるようで、新しい商売の資金を貸してほしいとせがむ(30万)、、、喫茶店の開業資金を貸したら、せっかくの計画がおじゃんになる、、、それでも、近所の喫茶店で修業をしたり、学友の兄に色々相談して忙しい日々だ、、、そんな時、夫が朝帰りした「麻雀していた」が理由だが、実は芸者を連れて仲間と温泉に行っていた、その連れの芸者は行方不明になった、同時に結局金を貸した長男が30万を持って家出した、、、芸者は死体で見つかった、自殺だった、、、長男は東京で新しい就職先を探していた、、、夫は妻が銀行員と恋仲であると疑い「別れてもいい」と言う、、、主人公は友人の家を訪ね「お兄さんと歩いているだけでも疑われる、女は生きにくい」と伝える、、、デコちゃんと三船の心の不倫、、、プラトニックラブと開業の資金がないんです!
成瀬の雨はいい、、、小津の<浮草>では雨自体がドラマチックだったが、成瀬の雨にはそこにドラマが生まれる、、、三船とデコちゃんが雨宿りをする、二人は立場をわきまえた付き合いをしているが、密かに想いを募らせている、三船がとうとう恋心を伝えようとした瞬間にタイミングを失い言葉を飲みこむ、、、ここもそうだが、この映画の全ておいて演者の「間」や「目/目の動き」が素晴らしいのだ、、、
三船が成瀬の映画に出ているのも不思議な感覚だし、デコちゃんとの共演もこれが最初で最後の貴重な作品だ、、、
音楽がいい、音楽の充て方が絶妙、いつも観客の感情を操るように音楽を出し入れするのが成瀬だ、、、
セットがいい、普通なのだ、セットに関しては「普通」は最大限の褒め言葉だ、完璧だということだ、そう感じさせるのが最高の仕事だ、、、