たふえいんといなあふ 不思議な魔法の言葉 

No Movie, No Life、、、映画と食べものと、ときどき天然妻、、、

小説/Nとのこと(3)アゲハ

 

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 「オナニーするのが昔から好きだった」とあっけらかんと言うように、普段は大人しい彼女だが、性行為に関してはとても積極的なNだった。

 

 

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 僕は彼女の髪の毛をなでながら天井を見上げていた。彼女の髪はきっと聖子ちゃんカットもサラサラヘアのサーファーガールにもなるのは難しく思えるほど硬く短く癖のある髪質で赤茶色がかっていた。下半身のヘアも同じ色なのでおそらく頭髪を染めていないことが理解できた。あの夜から一週間ほど経つがほとんどの夜をNの部屋で僕は過ごした。その間、海には行かず、バイトもさぼったが、珍しく講義には出るようになった。大学は歩いて5分だ、行くべきだ。

 

 彼女は性欲が強く。僕もそうだったので、二人のベッドの相性は良いと思う。性欲が強い者同士が一緒にいれば、それはまるでランナーズハイにでもなったランナーのように足を止めることが出来ず、互いにむさぼりつくように相手を求め全身に大量の汗を流しながら毎晩何度も果てた。彼女は僕との過酷で喜びに満ちた刻を白目をむいてひた走った。

 ベッドから這い出た僕はちゃぶ台に置いてあったタバコを手に取り、最初の一服目を天井に向かって吐き出した。彼女もベッドから降りてきて裸のまま僕の隣りにくっついて普段は吸いもしないタバコをせがむと、僕と同じように天井に向かって煙を吐き出しむせて笑った。

 そして、僕の「Yとはどうするの?」という問いかけには

 「Y君のことは好き。でも、まだダメ。まだ会わない。向こうが私に会いたいという気持ちをどんどん募らせても私は会わない。彼を懲らしめるの。これは復讐だから」

 それを聞いて質量が対等ではない復讐だと僕はむしろYに同情し、吸い終わったタバコを空き缶の中に落とし、ほんの少し底に残っているであろうビールで火が消えるよう缶を振った。本当は『Yとは終わりにして、僕と付き合おう』と喉から出かかっていた。毎日肉体を絡めている間柄であっても恋人ではなかったからだ。しかし、それよりも先にNが、

 「彼が本当に浮気をしていなければ私に会いたい気持ちを募らせるだろうし、やっぱり浮気をしていたなら、その浮気相手と過ごすだろうから彼は私に戻らない、もうじきハッキリするわけよ、もうじきだから、それまで私の復讐に付き合って」と言ったので、僕は頷くしかなかった。あくまでも僕は彼女の寂しさと性欲を埋める代用品であり、Nの心と頭の中心にはYがいることを僕は悟るしかなかった。

 

 僕が何か触ってはいけない物に触ろうとしたとき彼女は「いらっちゃいけんよ」と言って僕の手を止めさせた。

 「勝手にいらわんとって」

 その言葉に固まっている僕を見て、彼女は何かに気づいたように慌てて「触らないで」と言い換えたが、

 「それ言わん?」「全国的に言うじゃろ」と同意を求めたので、僕は微笑みながら首を横に振った。

 おっとりとして、ゆっくり話すNの時々ふいに出る彼女の故郷の言葉が好きだ。

 「それ広島弁だろ、可愛いね」と僕がそう言うと、彼女はニキビを潰した痕の残る白い頬を赤らめるので、それがまた可愛かった。

 「しわい」とか「たいぎい」とか言った時も、「え、それ標準語でない?」「標準語だと思って今までの人生ずっと生きてきたんよ」と言ってまた頬を染めた。

 一緒にNと過ごすうちに僕の心が徐々に彼女のものになりたいと願っていた。

 

 彼女が「生理がこない」と言った。

 「ぇ」

 僕の口からこぼれた小さな「ぇ」がNの耳に届いたかは知らない。

 「いいよ、もしそうでも、Hくんに責任取らせはしないけん。心配しないで」

 「もし、そうなったら正式に付き合ってほしい」と僕が真顔で答えると

 「付き合うのに正式とか非公式とかあるの?」と彼女は大笑いした。

 「だから、そんなに真剣にならないで、もともと生理不順だから」

 その数日後、たしかに生理が来て、彼女もほっとした表情を見せた。その経験からNのような体つきの女性は生理不順だというデータが僕の脳内のメモリーにインプットされた。生理不順の女性がどんな身体付きかを伝えるのはとても表現しづらいが、裸を見れば僕には判る。また、これも長年の脳内データの蓄積の成果か、服を着ている女性であっても、裸を想像すれば、実際もほぼそのとおりだ。

 それと何より、彼女の局部を初めて見た時は衝撃だった。女性の秘部を覆うヒダがとても大きい。当時はまだ沢山の女性と経験があったわけではないのでサンプルとしてはとても少なかったけれど、それでもそれが「特別」ということを感じた。それは羽を開いた状態で針でとめられ標本となっているアゲハ蝶のようだ。よく女性の性器を貝や花びら(とくにバラの蕾)に例えるが、Nの女性器のそれは綺麗なピンク色のアゲハ蝶だった。それが大きな女性は性欲が強い。

 そういえば、局部にほくろのある男/女は「性の地獄に堕ちる」らしい。昔、トイレで僕の局部に黒いホクロのようなものを見つけた時は背中が一瞬で凍った。性欲が強いのは認めるとしても、地獄には誰でも堕ちたくないだろう。その後、その黒い箇所に触ったらポロっと落ちた。ゴマのような何か物体がたまたま局部に付いていたのだ。僕はほっと胸を撫でおろした。それでも、局部にホクロのある女性を何人か見たことがある。全員、性に関しては奔放だった。

 

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 僕は初めてNをドライブに誘った。