たふえいんといなあふ 不思議な魔法の言葉 

No Movie, No Life、、、映画と食べものと、ときどき天然妻、、、

男はつらいよ(13)寅次郎恋やつれ

f:id:toughy:20200506153528j:plain

 

あらすじ

寅次郎が旅先で見た夢では、タコ社長夫妻が仲人をして寅次郎が結婚し花嫁を連れて柴又に帰ってきたら、おいちゃん・おばちゃんがなくなっていた。実際に、柴又にかえってきた寅次郎は、温泉津温泉(ゆのつおんせん)で知り合った絹代と結婚すると皆に伝え、さくらとタコ社長を連れて会いにいくが、絹代は家出した夫と再会していた。

第9話<柴又慕情>で、歌子の結婚に強く反対する作家の父(宮口精二)を必死で説得して、恋する女性のために一肌脱いだ寅次郎だったが、その歌子と津和野で再会する。懐かしい思い出話に花を咲かせた。しかし、そこで歌子から思わぬ話を聞かされて寅次郎は愕然とする。苦労の末に結ばれた夫とは早々に死に別れ、未亡人として婚家で姑らとともにつつましく生活をしているというのだ。

歌子は図書館に勤めながらひっそりと暮らしを続けていたが、その姿に哀れみを感じた寅次郎は、歌子を元気付けるために、とらやに招待した。歌子は東京で下宿し、久しぶりに楽しい時間を過ごすようになった。が、歌子は伊豆大島にある心身障害児の施設で働くことになった。

 f:id:toughy:20200506153542j:plain

 

実現はしなかったが

本作の後日談として歌子が三回目の再登場をするストーリーも考えられていたそうだ

 

そんなこともあり、

第48作目で渥美清の体調を気にした浅丘ルリ子

寅とリリーを結婚させてほしいと山田洋次監督に懇願したのだが、

 

すでに、

次回作で吉永小百合を登場させるプランが出来上がっていたのだね

山田洋次は最後まで寅の、いや渥美清は死なないと信じていたのだ、、、

 

f:id:toughy:20200506154222j:plain

 

本作は勿論、同じ吉永小百合が同じ役で

<柴又慕情>の続きになっているわけだけど

非常に面白い作りになっている

前作<柴又慕情>と同じようなシーンを本作でも当てているのだ

 

f:id:toughy:20200506154313j:plain

 

たとえば前作では

歌子の失恋エピソードとして金持ちのボ-イフレンドに

「一緒になったらバラに水をあげる以外は何もしなくてもいいと言われた」というセリフがあったが

 

本作では

寅が歌子から就職についてのアドバイスを求められ

「歌子さんはとらやに居て、庭で花に水でもやってフラフラ生活していればいいよ」と言ったというセリフがある

 

f:id:toughy:20200506153639j:plain
f:id:toughy:20200506153806j:plain
f:id:toughy:20200506153654j:plain

f:id:toughy:20200506153901j:plain

 

また

前作では歌子は泊めてもらう事を前提にとらやを訪問したが

本作でも歌子は実家に帰るつもりはハナからなく

最初からとらやに泊めてもらえことを当て込んでとらやを訪れている

 

そのどちらも

部屋に通された歌子とサクラの会話のシーンへとつながる

 

f:id:toughy:20200506153933j:plain

 

さらに

前作では「サクラさんのアパートにお呼ばれされた」ように

今作でもサクラのアパートに歌子は呼ばれ

前作と同じようにサクラ夫婦に悩みを相談している

  

f:id:toughy:20200506154041j:plain
f:id:toughy:20200506154106j:plain


またまたラストでは

前作、歌子の父親がとらやを訪問して

かき氷を出されるシーンがあるが

 

今回も

やはりかき氷をおばちゃんが歌子の父親に出す

ただね、前回はメロンシロップだったのだが

今回はイチゴ味になっている

 

もしかしたら

前回メロン味のかき氷を食べずに帰ったことを覚えていたおばちゃんが

今回は別のシロップと気を効かせたのかもしれない

 

こんな風に様々なシーンが前作と重なるので

前作を観た人には非常に楽しい構成となっている、、、

 

f:id:toughy:20200506154124j:plain

 

この映画の名シーンと言われているのが

吉永小百合の歌子と宮口精二の父親との和解

 

歌子がとらやに帰ってくると父親が歌子を待っていた

宮口精二がいよいよ何かを娘に伝えたいとする直前に

薄暗い店頭にポツンと灯が点くんだね

 

こういう光景ってあるけど

それが絶妙のタイミングなんだよ

 

できれば宮口精二には泣かずに堪えて欲しかったけど

いずれにしてもいいシーンだね

 

この間寅はずっと背を向け隅に居る

背中で宮口精二のセリフを聞いているのが

東宝と松竹の違いはあれど

業界の先輩に対するリスペクトな感じにも思えた、、、

 

f:id:toughy:20200506152359j:plain

f:id:toughy:20200506152415j:plain

 

あとね

花火のシーンもいいよ

 

寅がしんみりと、思わず

「きれいだね」と呟いてしまう

 

歌子は、何か言った?みたいなこというんだけど

「いや、浴衣がね、きれいだ」って寅は答えるんだね

 

f:id:toughy:20200506153154j:plain
f:id:toughy:20200506153215j:plain
f:id:toughy:20200506153250j:plain
f:id:toughy:20200506153235j:plain

f:id:toughy:20200506153326j:plain

 

今回

どうしても、分からなかったことが一つある

 

島根を後にするサクラとタコ社長の駅のプラットホームでの場面

駅のそばの学校からブラスバンドの演奏が聴こえてくる

炎天下、校庭で、ブラスバンドは夢中で演奏しているのだが、

 

サクラがその光景を非常に気にしている

随分と長いコマをこの場面に要しているのだ

さいごには汽車が到着してサクラがふり返り

気にしながら汽車に乗り込んでフレームアウトしてしまっても

キャメラはFIXのまま校庭のブラスバンドを映して暫くカットを割らない

 

f:id:toughy:20200506152115j:plain

 

これにどんな意味があるのかよく分からない

 

普通こういった場合

そのシーンの前後にそれを読み解くエピソードやシーンやセリフがあるはずだが

前後どころか、劇中の何処においても

サクラのその時の心情を表わすヒントは登場しない

 

たとえば

このシーンの直後に寅が食堂でうどんをすするシーンがある

寅が何気にナルトをつまんで食べずによけるが、

 

終盤、おばちゃんにうどんを頼むシーンで寅は

「ナルトは入れないでおくれよ、あれは目が回っちゃって良くない」というんだね

 

こうなると、

あ、そっか、寅がさっきのシーンでナルトを嫌った理由が分かるわけだ

 

ところが

このサクラのブラバンへの想いが結局最後まで分からずじまい

 

しいていえば

この炎天下で夢中に演奏する子供たちを見て

昔の自分を思い出し

子供は何かに夢中になって嫌なことも忘れられるけど

大人は苦労が絶えないと思っているのかもしれない

 

たいへん浅はかな解釈と承知しているので

是非ともその本当の意味を山田監督に伺いたい、、、

 

f:id:toughy:20200506152127j:plain