黒澤が生前に言った言葉
「サタジットレイを観たことのないという人は、月と太陽を見たことがないというに等しい」
月と太陽を見ずに生きているつもりか!というわけだね
ようするに
たくさん映画を観ているつもりでも
『サタジットレイを見ずには映画を観ているとは言えない!』と、言うことだね、、、
オープニングクレジット
本編最初のカットはハンカチに刺繍を入れる手元のアップ
妻が夫のために刺繍をしている
夫婦には子供がいないようだ
家は大きな屋敷
夫は新聞社を経営していて裕福だ
しかし、夫婦では持て余す広い家で召使の男を呼んでも
年老いた男は耳が遠く話し相手にも向かない
夫が通りかかった時に刺繍を見せるが、夫は「ヒマなのか」と冷たく返す
「ヒマならいくらでも」妻は大きな家と長い時間を持て余している
刺繍をしたり、道行く人々をオペラグラで観察して時間を潰す日々
小説は家中の書物を読んでいて夫よりも読書家だ
読書をするのも時間を持て余しているからであり
それによって文才も培われたようだが
何か書いてみればと勧められても
書くような出来事が妻の周辺にはない
孤独な妻と
仕事を「愛人」と言ってはばからない夫
そんなある日
妻の兄夫婦が夫の会社の手伝いに屋敷に引っ越してくる
やっとトランプする相手ができたが
兄の嫁とそれ以上の中を深めることもない
すると
夫が可愛がっている従兄が大学を卒業して
しばらく間、屋敷で暮らすことになった
文学や芸術に長けている従兄との時間を共有する妻
しだいに従兄に対して恋心を抱いていく
従兄のためにスリッパに刺繍をする
本来は夫のスリッパにするはずだった刺繍だ
しかし
しょせん実ることのない恋心
従兄は屋敷を出て姿をくらます
まもなく
兄夫婦は夫の会社の金を持ち逃げして消える
再び孤独となった妻に
夫は会社を再建するという
それにあたっては
妻が協力して一緒に紙面作りをすることとなり
夫婦は力を合わせて前に進むかにみえたが、、、
サタジットレイの女性映画
というか、成瀬的な、<めし>のような
夫婦の溝、温度差、秘かな恋心
夫婦の信頼関係の崩壊と再生
<チャルラータ>
すごく魅力的な映画だ、、、
ブランコ
オペラグラス
彼女の生活に執筆の題材になるような物語は起きない
夫の従兄のアドバイスで「生まれた村」「過去の出来事」を書き始める
歌や詩、芸術についての話し、従兄は彼女の生活に刺激と潤いを与える
妻の兄貴がこの後、金を持ち逃げするが、本編ではその後兄貴は出て来ない、、、その後どうなったとか物語を描くことを優先しないから、きっぱりとこの登場人物を後追いすることはない 、、、やっぱり立派な監督はそうでなくてはね、、、
終盤の4コマ、こんなカット割り、、、
行方不明になった従兄の消息を知り、泪する妻
深い関係であったわけではない
非常にプラトニックな恋心
それでも、それを目の当たりにしてしまった夫は傷つき、夫も涙する、、、
ラストの数カットは静止画、、、再生の予感 、、、