「昨年ボクが初めて観た旧作洋画」の1番テッペンに挙げた映画<アメリカアメリカ>
日本ではむしろ<波止場><紳士協定><欲望という名の電車><エデンの東>といった名作の陰に隠れエリアカザンの代表作と言われることはあまり日本ではない埋もれがちな傑作<アメリカアメリカ>
名匠エリアカザンがアカデミー賞の名誉賞を受賞した際
スタンディングオベーションはまばらで
だからもちろん拍手も少なく
ブーイングさえも起きたとされている
それは御存知の通りエリアカザンが
赤狩りの際に司法当局と取引をして「仲間を売った」とされることからだ、、、
日本以外では
ずっと見逃していたことに大変な後悔を感じている
もうすこし早く観ていれば
もうすこしエリカアカザンのことが理解できていたかもしれない、、、
いや、本当は、何度かトライした
しかし3時間に及ぶ長編で
しかも重苦しい作風に数分で止めてしまった過去がある
そしてそのまま、鑑賞後回しリストに入れてしまっていたのだ、、、
ところが
あらためて2、30分眺めていると
だんだん引き込まれてくる
政治的な部分もあるが
決して説教臭いとか
芸術的に鼻にかかるとか
そういうこともなく
むしろ、エンターテイメント的な要素も含み
先を知りたいとかぶりつきになるストーリー
物語
アルメニア人はたびたびトルコに反抗し局地的に反乱を起こしていた
一方ギリシャ人は従順だ
主人公の青年だけではアルメニア人に交じって
ときには戦闘にも加わり抵抗を続ける
そんな青年にも夢がある
漠然と米国に憧れ
いつか渡米することを夢見ているのだ
ある日
この主人公の青年が道端で
裸足同然でトボトボと歩く若者と出逢う
その若者は米国を目指しているという
「すこしでも前に進めば、いつか夢は叶う」と主人公につぶやく
主人公の青年は自分の靴を脱ぎ
その若者に靴を与える、、、
ギリシャ人ながら田舎の村で
そこそこ財を築いていた主人公の父は
町で商売をする伯父を訪ねるよう主人公に命じた
一家のほとんどの財産を預けての旅だ
一家の命運を握った旅だ
ところが町までの交通手段はない
ロバに荷物を背負わせ
何日もひたすら山岳地帯を歩いて町を目指すのだが
山賊など悪人たちに狙われ
まだまだ幼さも残る青年には厳しい旅となる
途中
追剥に襲われているところを助けてくれたトルコ人の男と旅を続けることになるが
このトルコ人こそ青年にたかり続け
とうとう身ぐるみをはがされることとなってしまう
「ギリシャ人は黙って羊のように殺される、侮辱されても言い返すこともせず、戦わず、従順で愚かなギリシャ人」とトルコ人が青年に吐き捨てる
とうとう青年は
抑えることが出来ずに怒りを爆発させるのだが
これで青年は吹っ切れた
全てを失った者の
何も失うことのない強さをむき出しにするのだが
それでも、簡単に夢は叶わない、、、
エリアカザンの先祖が辿った渡米の実話を
再現してみせた物語だそうだ、身震いする、、、
地元、道中、港町、船内、そして米国
さまさまな舞台とエピソードを重ねた構成と語りが巧い
カット割り、キャメラワークが
まるでスコセッシといってもいいほどだ
スコセッシがこれを撮れば同じものになるだろう
これを初めて見た時のスコセッシの興奮が想像できるようだ
そしてスコセッシはこの作品から多くの影響を受け自分の作品に反映させている
もう一つのスコセッシであり
もう一つのバリーリンドンでもあり
もうひとつのゴッドファーザーPARTⅡでもある
ユダヤ人など非差別人にも共通し
一旗揚げようと世界中から米国を目指す全ての民族に共通し共感を得るだろう
画に力がある
まさに「たふえいんといなあふ」ToughAin'tEnough
タフなだけでは夢は叶わない
ぜったいに鑑賞すべき、Must Movie!