あの<ゴモラ>のマッテオガローネの監督作
<ドッグマン>
日本のトリミング店は
どこも小奇麗で明るく洒落ていると思うのだけど
この映画に登場する店は
殺風景で仄暗く寂れていて
まるで刑務所のようだ
ファーストシーンで
主人公は預かった大きな犬の扱いに苦戦している
犬は主人公になかなか上手い具合に洗わせてはくれない
この大きな犬は
その後登場する
町のチンピラ悪党の男にも例えられるのだろうね
みんな集まればヤツを抹殺する相談をするほどの
寂れた廃れた町を抜け出せないでいる人々とってのとんだ厄介者だ
主人公はそんな皆の話しに同調することもなく
ただ無表情で聞いている、、、
物語は簡単で、観客みんなが想像するようにストーリーは展開する
犬のトリミングなどのペット店を営む主人公は妻と離婚し娘と離ればなれながら、友人たちや犬たちに囲まれてそれなりに楽しく暮らしている。ところが一つ頭痛の種は町の嫌われの者のチンピラのいいなりになっているのだ。しまいにはチンピラの身代わりに服役までしてしまうことになる。そして、刑務所を出てきた主人公は、ある方法でチンピラの男を殺す、、、
主人公の男には垣根がないんだね
誰でも受け入れている
厄介者の男であっても
臆病で縁が切れないという理由だけではなく
どこか完全に嫌いになれないでいるように見える
彼にとっては
乱暴な犬も、乱暴な悪党も、同じように
心底嫌うことが出来ないでいるようだ
主人公の男を演じたマルチェロフォンテが素晴らしく良いね
アルパチーノから魂を抜いて貧相にしたような容姿がこの役柄にはまっている
そして、まさしくこの作品でこの年のカンヌ映画祭で主演男優賞を受賞した
そして、チンピラ悪党も非常に良い
外見は格闘家のヒョードルのようで
皆が恐れるほど無敵に強く観客の心を逆なでする
映画史上の悪党連中リストに加えるべきキャラの誕生だ
途中
観客は皆こう思っただろうね
「なんでチンピラをかばうのだ」かばって自ら服役
そして
最後では「毒殺するのかな?」と
まるでサミュエルフラーの<ホワイトドッグ>のように「犬に襲わせて殺すのか?」と
みんな映画の結末はおぼろげながら見えているのに
その通りではない
最後は主人公が殺した男を肩に背負って
砂浜の海岸を行く
まるでクルーゾーの<情婦マノン>のように
主人公には全て見えていた
こうすればこうなると
こんなことをすればこうなってしまうと
そしてそうなるように自ら進み出て
決着をつける
ラストのカットに
中途半端な感覚を持った観客も多いと思うが
あの終点で良いのだ
殺したことで
どういう展開が待っているか
それも主人公には見えていることで
観客にいちいち説明しなくてもわかることだからね
説明的なラストは必要ないのだよ
彼にとっては
次に待ち受ける刑務所行きよりも
友人たちとの信頼関係を一瞬でも取り戻すことが何も重要なのだ、、、
今年観るべき一本には違いないね!
3.5☺